アラサーちゃん

霧の夜の戦慄のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

霧の夜の戦慄(1947年製作の映画)
3.3
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〖霧の夜の戦慄〗
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久々にTSUTAYAの発掘良品より。
モノクロ古典サスペンスやっぱりいい。じわじわ迫り来る心理的なホラー要素が素晴らしい。
モノクロサスペンスといっても40年代だから、複雑で技巧を凝らす50年代以降とは若干テイストは異なるんだけど、1940年代の英国っていうとヒッチも活躍したサスペンス世代ですから、現代とは一線を画すアナログ感がいいんですよね。

ただ、序盤、中盤の作りがしっかりしていて惹き込まれて言うことなしなのに対し、ラストが失速というか、疲れ果てて投げやりに終わらせた感じが否めない。その点についてレビューするので、ネタバレアウトな方は読まないでくださいね。

ストーリーは、大学の教室で講師がとある授業をはじめるシーンで幕を明ける。犯罪心理学を説く彼は、とある男の完全犯罪について話し始める。
この回想劇のなかで、ひとつの死が起こる。それについてのミステリー感もいいし、それが回想空間ということは現実空間に戻った時に、さらに何か起こるんじゃないかという二重の楽しみが生まれる。

回想のなかの主人公と語り手の講師が同一人物であるということがしだいにわかっていくのだけど、講義終了後面白いですよね。講師と生徒のやりとり、講師の車に女性がふらりと乗り込んでくるシーンで、〖ローラ殺人事件〗や〖ゴーン・ガール〗に見る折り返し地点での大胆な転調を感じる。
そして、現実空間で先程見た回想空間とおなじショットが登場するのだけど、回想からのリアリティ映像という逆転構成なのが面白い。

中盤、ふたつめの死が起こるくだりもヒッチコックを彷彿とさせ、鍵の使い方なんて、〖死刑台のエレベーター〗序盤のひりひり感を思い出させてくれてすごくいいのに。
終盤のつまらなさ。あれを美徳としてのエンディングなのかもしれないけれど、中盤までよかっただけに尻すぼみしたような気分。

メニュー画面もなぜかタイトル間違ってるし(こんなことってある?)、いろんな意味でちょっと残念ですけど古典ノワールを充分に楽しめました。二級の〖死刑台のエレベーター〗と言ったところですかね。