YasujiOshiba

続・夕陽のガンマン/地獄の決斗のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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DVDにて。何度目だろうか。何度見ても感動してしまう。今回は特にそうだ。モリコーネの音楽にみみをそばだてながら、その音楽が駆動する映像をおいかてゆく。すると、監督レオーネの独特が際立ってくる。ロングショットから一転してのクローズアップ。クローズアップが切り替えられると、大写しにされる目。そしてようやく人物の面影が目に入ってくる。その切り替えのリズムを仕切っているのが、モリコーネの音楽なのだ。

いやはや、ともかくお目当てのあのサッドヒル墓場のシーンに耳を傾け目を凝らす。その直前には、ラングストーン橋の爆破のスペクタクルが魂を揺さぶると、北軍の酔っ払いの気骨ある反戦将軍が微笑みながら死んでゆき、川を渡れば美しい南軍の若者への最後の一服と慈悲の一撃。その間に逃げ出すトゥーコ、大砲をぶっ放すブロンディ。転がりついたのがサッドヒル。そう悲しみの丘という名の墓地なのだ。

これを書いているだけで泣けてくるのは、ぼくの頭の中でモリコーネのあの「黄金のエクスタシー」が鳴り始めるから。あの「醜い奴」イーライ・ウオラックが憑かれたように走り出す。カメラがその姿を追う。ぼけた墓標の数々が通り過ぎてゆく。背を丸めて、黄金をめがけて、欲望が走る。カメラが回る。墓標が回る。サッドヒルが回り出す。教えられた名前「Arch Stanton」の墓標の前で世界が止まる... まさに4分にわたるエクスタシー。

この映画では、撮影よりもさきに曲が書き上がっていたという。だから映像は曲に合わせて、その曲調、リズム、音色を反映しながら、むしろそれを際立たせるように撮られているといっても過言ではない。そうなのだ。ここにあるのは、映画のための音楽ではなく、もしかしたら音楽のための映画でもよいほど。

何度見ても、何度聞いても感動してしまう。だって、トータルアートとしての映画がここにあるのだもの。
YasujiOshiba

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