emily

チャーミング・ガールのemilyのレビュー・感想・評価

チャーミング・ガール(2005年製作の映画)
4.0
 郵便局で働く29歳のチョンヘは、マンションで一人暮らし、母親を亡くし、過去の痛みを背負い生きている。変わり映えのない日々、孤独な日々子猫との出会いから、少しほんの少しだけ変化が訪れる・・

 全編手持ちカメラによる揺れが彼女の心情の痛みを淡々と紡ぎあげる日常に中に徐々に交差して見せる。変わり映えのない日々、毎晩ソファーで眠り、目覚ましと共に目覚め、郵便局で淡々と仕事をこなす。チョンヘを演じるキム・ジスにカメラはぴったり寄り添い、表情だけでなく、後ろから追いかける。日常の何気ない行動や、何気なく目に入る物をチョンヘを通してみる。日々の中で郵便局へきているお客さんに会っても気が付かない。たくさんの人々があふれる中で、孤独を身にまとい、自らに蓋をし、極力周りとの関係を経って生きている。29歳という絶妙な年齢と都会で暮らす孤独の情景が微動するカメラと共に痛切に伝わってくる。

 徐々にひっそりと明かされていく母親との回想、そこから彼女が孤独を自ら抱える理由。心の平坦は日々のルーティンを守る事で保たれてきた。緑とふれあい、一人テレビを見ながら過ごす時間が何よりも大事だった。しかし遅かれ早かれ目を背けてきたものに向き合わないといけない。人とのかかわりを極力避けてきた彼女は子猫と出会い、温かい気持ちを思い出すのだ。それは母親との思い出と交差していく・・大げさではなく些細な描写を挿入し、淡々とした日々の中で彼女が初めて感情をあらわにする。涙を流す。きっとずっと流したかった涙だろう。猫はきっかけに過ぎない。郵便局に来る速達を頼む客との出会いも一つのきっかけに過ぎない。しかしふとしたきっかけで人は変われる。そうして芽生えた思いはなくしそうになってその大切さに気が付くのだ。

 人は人なしでは生きていけない。何も大げさな事ではない。構える必要なんてない。頼りたい時に頼ればいい。。肩の力を抜いて、一人で生きていく必要なんてないのだ29歳都会で暮らす孤独なOL・・すべてに勇気がなくて、一歩踏み出せなく孤独の中に生きている日々。その描写には少なからずと共感できるものがある。一人はさみしいが楽だ。恋をしなければ傷つくこともない。当たり前の事を当たり前に描き、そこから広がる感情にじんわりと心温まる。
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