はまたに

火垂るの墓のはまたにのレビュー・感想・評価

火垂るの墓(1988年製作の映画)
4.8
高畑勲監督追悼の金曜ロードショーにて、小学生以来の鑑賞。

トラウマ級の大嫌いな作品から、大好きと言っては語弊だけれど、受け入れられる傑作に見え方が変わったように思える。

あんなに憎かった西宮のおばさん、今の価値観でこの人のことを責められない。確かにいい性分はしていないけど、鍋にこびりついた米を食べ、働かざる2人同様、雑炊をすする姿に違う印象があった。

「実は清太が悪い」と言われがちな清太も、やはり責めるわけにはいかない。幼い妹を抱えて戦時に親なしになった14歳の必死を、今の常識で推し量るなんてできるわけがない。最後まで銀行に残していたお金は、母が死に、家が焼け落ちた後に、勝って勇んで帰ってくるであろう父との生活のために残していたに違いない。考えるべきことは何か、あれこれ頭に入っているけどうまく立ち回ることができない。14歳の当たり前の未熟。それは悪くも愚かでもない。

ラスト、あの鮮烈なオープニングに匹敵する「豊かな現代」との対比は、岡本喜八『肉弾』のそれを思い起こさせた。間違いなく平和になったはずなのに、自分たちは一体どこへ来たんだろうかと呆然とさせられるような、虚しさに満ちた光景が突きつけるもの。ホタルの光よりも眩く、いつまでも輝き続けるはずの街の光が、鈍く精彩を欠いた意味。それが強烈すぎて、むしろ反戦という作品の特性を忘れ去ってしまった。

監督のご冥福をお祈りします。
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