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クラッシュのmireiのレビュー・感想・評価

クラッシュ(2004年製作の映画)
4.0
「クラッシュ」 2005 ポール・ハギス監督

この映画は最初から最後まで、人種差別について述べている、終わることのない連鎖、人々は無意識にそして故意的に人の肌、生まれてきた場所、育ってきた環境思想の違い、そういったもので排除するべき物を考える、差別意識が生まれるのだ。
人との出会いは、クラッシュ、つまり瞬間的な衝突によって生まれるという。人々はぶつかり合い、出会い、思う、そこに親しみを感じるか憎しみを感じるか...細やかな衝突が、我々の日々を作り上げる。
私はモロッコと日本のダブルだ、私の体には二つの血が流れている、二つの思想があり二つの考え方がある、私にとってそれらはとても誇りな事だ。本来ならば1つの体に一つの思想や言葉、生まれ、流れる血があるが、それが私には二つある、そのおかげで私には広い視野で物事を見ることができていると、自らそう思う。
もちろん純粋な日本人、純粋な海外の人が広い視野で見れていないという事ではない、ただ無意識に差別的意識を自分の中に取り組みあらゆる人を受け入れるべきだという思想が、私の中には食い込まれていた。
小さい頃から私の容姿を見ると、大勢の人が私を差別的な言葉で貶していた、子供だけではない、大人もだ。
とても記憶に残っていることがある。小学生の時クラスメイトの日本人の女の子が道端にゴミを捨てていた、私はその子の後ろを歩いていた。そして、その子がゴミを捨てていた事に気づいてはいなかった。
すると、知らないおじさんに私は止められて怒鳴られた。
何故そのようなことをするのだ。と私はそんなことしていないと強く言った、あの女の子が捨てたのじゃないか、といった。
すると、お前みたいな外国人が日本をダメにする。そう言われた。
これも一種のクラッシュ、衝突なのであろう。
あの時から私は人種差別というものに過度に反応するようになり、大きな心の傷を負った、それ以降もダブルだという理由でいじめを受けたこともあった、大人から理不尽な態度を受け入れるように諭される事もあった。悔しかった。
ただ、ここまで言うと私は完全な被害者であり、差別は絶対にしてはいけないと、誇り高く言える立場の人間であるが、そうでも無いのかもしれない。
この映画にある警察の青年は途中で、親切心から黒人の男の人を車に乗せる、そして彼の自己中心的な心持ちでその黒人を降ろそうとするが、黒人がポケットからお守りを出そうとした瞬間中だと思い、彼を撃ち殺してしまう。
無意識に、青年の中に染み付いていた人種的差別、黒人はポケットに銃を持っている黒人は人を安易に殺そうとすることができる、そういったものが彼の中に染み込んでいた、染み付いていた、そしてそれらが顔を出してしまった瞬間だった。
私はあの青年に対して強い嫌悪感と残念な気持ち、そしてあってはならない、共感の気持ちを抱いた。人種差別はあってはならないと思うだが私も日々生きていく中で中華系の人間を見ると、マナーが悪いのであろうと思ってしまうこともあり朝鮮人を見てしまうと、どうも北朝鮮のトップの人を思い出してしまう。
全員が全員彼らに従っているわけでもなく、マナーが悪いわけではないのに、私の中にそれらの情報が染み込んでしまっているのだ。
意識というのは怖いものだ、その時そのことを考えていなくてもそういった差別的な染み付いた思想、考えは行動に出てしまう。
相手を軽んじた行動馬鹿にした発言、そういったものが無意識に出てきてしまうことがある。
私は芸能界、テレビの世界、映画の世界、そしていつかは世界を駆け回りたいと思っている。こういった自分の染み付いた考えよう一刻も早く一つ一つ消していかなければならない、あの青年のようになってしまっては遅いのだ。
この映画ではとても感動するシーンがあった、透明なマントの話だ。
5歳に娘ができたら、この透明なマントをプレゼントする、その透明なマントは秋をも止めてしまうこの世のあらゆる全てを必ず貫通させない、自分自身をしっかり守ってくれる最高の武器だ。
その武器があったから彼らは救われた、あの家族は生き伸びる事が出来た。マントだけじゃない、あの娘の勇気に心の底から感動する、そして嫉妬してしまう。
撃った銃が不発でよかった、あの父親もきっと考えることがあっただろう、本当にあの娘を撃ち殺してしまっていたら、彼の人生はもうそこで終わりだ、罪を犯さなければ人生はきっと何度だってやり直せる、破滅の衝突だけではなく、救いの衝突が存在する、今回は後者だったのかもしれない。

1人1人の人生がどうか安らかなものであるようにと思う。
人を傷つけることはとても安易だが、傷ついた人はその記憶を消すのに一生の時間がかかる、私がそうだ。だが、私もきっと今までに何人かを傷つけてしまっているのかもしれない。今更それを償い謝罪し、ひとつひとつを消していくことは難しいであろう、覚えていない事もきっとあるのだろう。だからこれから私の行動は誠心誠意のものか、相手を馬鹿にしていないか誤解していないか、差別的意識はないか一つ一つ行動する前に発言する前に自問自答できたらと思う。
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