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インセプションのmireiのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
4.3
インセプション (2010) クリストファー ノーラン監督

この作品が今から約10年以上も前の作品であるということが理解しがたいほどの完成度、そして、CGの美しさ、この作品は本当に歴史に残るものなのかもしれない。「パプリカ」の実写化のようなもので、人の夢の中に入り込み、夢の中で戦い、夢の中でさらにまた夢を見る、この脚本は完全に今監督の「パプリカ」である。クリストファーノーランが今監督にストーリーを頂くための許可を求めに行ったという話、この界隈ではとても有名なことなのであろう。

私は今回この映画を鑑賞したのは2回目だ、ただ何度鑑賞してもおそらく全てを理解するのには難しい、それほどこの映画は、ディティールがしっかりと食い込まれている。むしろ食い込みすぎだという程細部まで話が作られている。そしてこの作品にしっかりと入り込んでいる役者たちの芝居の威力が凄い、恐ろしい。この作品で必ず賞を勝ち取ってみる、世界をあっと言わせてやるという意思、熱意が伝わる。

この映画はルールがかなり難しい、そのルールを理解していないとはこのストーリー、そして話の進み方が全くわからないと言っても過言ではない。おかげで第1回目鑑賞時の私の脳内はダンスパーティー状態でやった、登場人物が何を言ってるのか全くわからないのだ、字幕で見ようが日本語吹き替えで見ようが全く理解ができなかった。

第一階層の夢の世界で夢を見ると第二階層へ、第二階層の夢の世界で夢を見ると第三階層へ。深い階層になるほど時間の経過が遅くなる。夢から覚めさせるには、夢の中で死亡するか、「キック」と呼ばれる手法
(平衡感覚を崩すことで強制的に眠りから覚ます)が採られる。
ターゲットの夢の中に潜入することで、エクストラクション[情報を抜き取ること]インセプション[情報を植えつけること]が可能になる。ターゲット側も訓練を受けることで、潜在意識を武装化させて、侵入者たちを排除することができる。
などといった非常に細かいルールがある。疲れる。非常に。
この映画を観賞する前に無料パンフレットを配ることででルール説明を見せて欲しいくらいだ。

クリストファーノーラン監督の作品で私が一番好きなのは。やはり彼が新人賞を獲得した「メメント」という映画だ。あの映画は逆再生と言うのだろうか、ストーリがオチから始まりに向けて映画が逆方向にスタートする、そのため謎解きのように観賞者はどんどんと答えがわかっていく仕組みになっている。主人公が数分で記憶をなくしてしまうというデメリットを持っていることにより、周りの人がそのデメリットを有効活用し欺いたり裏切ったりしているのを後々に知る事があった、その時の驚きや恐怖、心がゾクゾクとした感覚を私は今でも覚えている。新人にしてあそこまでディティールに力を入れた脚本の映画作品を作っているのだから、彼がインセプションを完成させたのは当たり前なのかもしれない。むしろ彼だからこそ「パプリカ」に惹かれて「インセプション」を生み出したのだとおもう。
(因みに調べてわかったのだが、パプリカだけでなくアルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編集「伝奇集」からも強くインスパイアされているとの事だ。そしてこの映画を作り出すのに、約20、年間も、脚本を練っていたのだという)
その他にもダークナイトやインターステラーなど、彼は様々な映画作品を成功させている、これからも期待のできる、映画監督であることは間違いない。一体どんな実力派大御所俳優達が今後彼の作品に関わるのだろうか、楽しみでならない。

因みに、主人公のコブの名前はノーランのデビュー作「フォロウィング」に登場する泥棒のcobbを引き継いだものならしい。サンスクリット語で「夢」という意味を持つとのことだ。

最後のエンディング。コマは、あのまま回り続けたのだろうか、それか止まったのだろうか、私はもちろん止まっていると思う。あれはおそらく現実だ、そうあってほしい。
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