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激動の昭和史 軍閥のmireiのレビュー・感想・評価

激動の昭和史 軍閥(1970年製作の映画)
3.4
軍閥 (1970) 堀川弘通 監督

この映画監督、東条英機のこと好きすぎないかというのがシンプルな感想だ。まず、軍閥という題名は違う気がするという考えがこの作品を見ているうちに生まれてきた、軍閥というものはWikipediaにて
旧・日本軍における、この第1・第2の意味での「軍閥」については、大日本帝国陸軍#軍閥・軍国主義思想を、その源流となった軍内における藩閥については、藩閥#陸海軍における藩閥を、それぞれ参照のこと。
と書かれてあった。簡単に言えば、海軍陸軍それぞれのルーツや違う考えを持つ、その派閥のことを言う。この映画では、その派閥が対立し合い、いかに戦争を進めるか、止めるか、勝つか負けるかを対峙しながらも意見をぶつけ合い結論まで持っていくような映画なのかと思っていた。が、実際に話し合いだとか、それぞれに意見を言葉にして伝える場面はそこまで多くはなかった、多いとすれば東条英機の個人的な情景だ。
東条英機は内閣総理大臣つまり日本のトップとして決まった際に、明治神宮靖国神社を参拝する時期的に言えば真珠湾戦争あたりなのだろうか
、あまりそこは深く覚えてはいないが、おそらくそこら辺であったと思う。
その描写というのは東條英機ファンからすればとても喜ばしいマニアックな描写ではあるが、今回は別にいらなかったのではなかろうか、と思う。わざわざここを撮影、提示するということは監督には見ごたえがある場面だと思ったのだと思う。要するに彼は絶対に東条英機が好きだ。

合間合間に現れる東条英機の個人的な情景提示の隙間に、実際の戦争当時の永沢が流れる、それらはかなりグロテスクであった、もちろん本物の映像だからだ、突然流れてくるためホラー映画を観るよりも怖かった。どんなに怖いホラー映画よりも、実際にあったあの殺戮とした映像の方が私は寝られないほど怖い。もちろん、沖縄上陸の映像も流れた、そして初めの方であっただろうか、盧溝橋事件あたりの映像も流れていた日本軍が何をしていたのかが、そこで一目瞭然だ。(この世界には沢山のデマがある、もちろんそれら全てを照合するのは難しい。私に言えることは、この世界は被害者が加害者にもなり、加害者が被害者にもなりえる世界だということ、そして戦争というものはそれを簡単に行うことができたということだ)

この映画は東条英機に焦点を当てすぎていて、時系列というか戦争のスピード、尺というものがあまり比例していなかった。インパール作戦の尺があまりにも長いのに、ビルマ、硫黄島はあっという間。因みにガダルカナルは1秒もなかった。

この映画作品は三船敏郎も出ているということもあり、とても楽しみに見ていたが、山本五十六役の三船敏郎は中盤よりも前に先に亡くなってしまい、徐々に東条英機の謎尺に翻弄されはじめ、実際にあった戦争の映像を流され、それを見て心が疲れ、最終的には原爆投下の直後の無残な人間の焦げた遺体をドアップで写し、長崎はスルーして終わるという心が置いてきぼりにされた、そんな映画であった。

見て損はないだろう、昭和小ある程度分かっている人が見れば楽しめるかもしれない、もちろん東条英機ファンは喜んで見ることができるだろう、だが戦争映画をよく観賞している私は、今回は好むことができなかった。作品には善し悪しと言うよりも、合う合わないがあるのだなと改めて感じた。
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