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聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-のウシュアイアのレビュー・感想・評価

3.5
三船版に投稿していました。
[あらすじ]
日中戦争が泥沼化し,戦況の打開のため日独伊三国軍事同盟を推し進めようとする陸軍とその世論を煽るマスコミが席巻する日米開戦前の日本。

そんな中、海軍次官・山本五十六、海軍大臣・米内光政、軍務局長・井上成美は陸軍やマスコミの圧力に屈することなく、同盟に反対していた。陸軍と一触即発の中、山本の身を案じた米内は、山本を連合艦隊司令長官に任命し、東京から遠ざけるものの、世論も同盟・日米開戦に傾いていく。

[感想]
戦後においても、名将として名高い山本五十六を描いた作品である。

この作品を観て感じたのは、山本五十六という人物は、真珠湾攻撃を成功させた戦時における名司令官と云うイメージとはちょっと違うのではないかということである。

物語の始まりは、米内光政海軍大臣の下、山本五十六が海軍次官として軍政の中枢部にいるところから始まる。山本は日中戦争の戦局を打開するために、アメリカと敵対関係にあるドイツと同盟を結ぶことは、圧倒的な国力の差、日露戦争とは異なる国際情勢から、破滅に続く道であると、冷静に分析していた。

そして、開戦後も司令官として早期に講和に持ち込むために一矢報いるというスタンスで戦闘に臨んでいたというのである。真珠湾の攻撃も宣戦布告を経た上で行い早期に決着をつけるためのもので、作品の中で真珠湾攻撃は成功とはいうものの、返ってアメリカ人の敵対心を煽ることになり、攻撃直後に新聞記者に語った言葉として、失敗であった、と語っているのである。

山本五十六は天才的な軍人というよりも、何よりも国防を考えていた頭のキレる軍政(防衛)官僚というのが実際のところで、本作品ではその様子を描いていた、というわけだ。

山本五十六が役所広司というのがピンとこなかったが、↑のような描き方だったので、それなりハマっていた感がある。

また、山本五十六の日本的な人の心のつかみ方も見どころである。
人の悪口や失敗に対する叱責は一切控え、立場の異なる人間とも和をもって接する。戦前の軍人というとプライドが高く、威張り腐っているというイメージだが、侍・武士に遡れば忠義に篤く、和を重んじることからも、それが本来の姿なのかもしれない。

苦しいこともあるだろう。
言い度いこともあるだろう。
不満なこともあるだろう。
腹の立つこともあるだろう。
泣き度いこともあるだろう。
これらをじっとこらえてゆくのが男の修行である。

やってみせ,言ってきかせて,させてみせ,ほめてやらねば,人は動かじ。

かの有名な遺訓の由来かくありき、と合点がいく。
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