ウシュアイア

コットンテールのウシュアイアのレビュー・感想・評価

コットンテール(2022年製作の映画)
3.7
つらい看病・介護の末、妻明子に先立たれた初老の作家・大島兼三郎は妻の遺言に沿い、散骨すべく息子夫婦と孫娘ともに妻の思い出の地・イギリス湖水地方のウィンダミアに向かい、旅を通じて亡き妻への思いを共有できない息子夫婦と向き合うというロードムービー。

初老の作家・兼三郎役はリリー・フランキー、妻・明子役は木村多江と『ぐるりのこと。』でも夫婦役を演じた二人が再び夫婦役。なんだかこの二人の夫婦役はとてもしっくりくる。一方で、息子夫婦が錦戸亮と高梨臨なのだが、芝居はともかく、木村多江が錦戸亮の母親役というのは年齢的に違和感が付きまとってしまった。

テーマは家族内での哀しみの共有。
決定的に仲違いしているわけではないが、家族が亡くなると、家族の中でも故人とのかかわり方には違いがあり、故人への思いに温度差があったりする。配偶者と子どもでは関係性も過ごした期間の長さに違いがあるので、妻を亡くした夫の気持ちと母を亡くした子の気持ちに違いがあるのは当然だ。同じ兄弟でも同居していたかどうか、介護への関わりなどずれがあることが多い。案外、自分のことで精いっぱいで、家族内での感情の方向性の違いや温度差に気づかないんだと思う。それを埋めるのはやっぱり対話なのだ。

日英合作なのだが、改めてこの作品を観ると何が日本的で何が英国的なのかは分からないくらい、作品の指向性からしても日本映画とイギリス映画は似ているところがあるように思えた。
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