佐藤哲雄

マンマ・ミーア!の佐藤哲雄のレビュー・感想・評価

マンマ・ミーア!(2008年製作の映画)
2.0
マンマ・ミーヤ!

ギリシャへ行く前に、この映画のロケ地のスコペロス島の景色を確認しておきたいと思い、2度目の鑑賞をしたよ。

だが私の記憶通り、残念ながら、景色はほとんど映っていなかった。

万人に一致する認識であろうと思うが、この映画は有名であるにも関わらず、中身はほぼ空っぽであり、9割ほどを70sや一部80sの有名すぎる歌で占められており、曲に合わせて全員で歌って踊りまくる映画だ。

ミュージカル映画、という位置付けになってはいるが、この映画はミュージカルではなく、言わば、アーティスト本人達のMVを俳優たちでなぞってリメイクしたパロディMVのような作品であろうな。

日本国内ではあまり興行は振るわなかったようだが、英国では凄まじい興行記録を残している映画である、という点を鑑みてもなお、中身の無さが際立ってしまっていたよ。

70sも80sも、当時、英国アーティスト達が世界を牽引していたことは周知の事実であるため、その点に関しては私も異論は無いよ。

だが、歌唱力が高い俳優陣によるパロディミュージカル(否、パロディMV)であれば良かったかも知れないが、このレベルの歌唱力では、流石に聴いていられなかったよ。

早送りしながら観ているにも関わらず、内容がゼロであるため、それでも途中で二度ほど寝落ちしてしまった。

20歳の娘たちがキャピキャピ騒ぎ続けるのは我慢も出来るが、今の私のような年齢の、いわゆる晩婚という設定なのであろうその母親たち(メリル・ストリープたち)まで、異様なテンションで喜怒哀楽のジェットコースターを演じ続けるというのも、観ていて違和感しかなかったよ。

10代のようなあのテンションと壊れ方で騒ぎ続けられるのは、40代までが限度であろう。

しかも、あのおばあちゃん達3人の会話が、まるで女子大生並みに下品で低俗だった点も、観ていてつまらなかったよ。

脚本すべてが2ch化していたような印象だな。

さて、映画のストーリー的には褒められる点が無いので割愛するとして、早速、俳優陣について少し触れておこうかね。

メリル・ストリープが最年長で、その次がステラン・スカルスガルド、次いでピアース・ブロスナン、そして、10歳以上離れてコリン・ファースというキャスティングだが、当時まだ55歳だったステランが普通にお爺ちゃんだったよ。

自分と同年代だったはずの俳優の当時の老け方に、まずショックを受けた。

当時54歳だったピアースは、まだなんとか中年、いや、壮年風な外見に見えたので、それが救いだったが、何がショックって、まさか自分もステランのような、あんなに老けて見えているのだろうか、という不安感だよ。

あまりにも不安になり、娘にLINEしてしまった……

娘は良く心得ており、返ってきた返事は、「お父さんは世間のお父さんたちよりずっと若く見えるから40代前半と言っても通ると思うよ」だった。

そこまで極端に若く見えてしまうと逆の不安感も湧いてくるが、ひとまず娘が上手いこと私を慰めてくれた(であろう)から、今は気持ちも落ち着いているよ。

まあ、面倒なことを聞いてきたなぁ、と感じて慰めておいたほうが簡単だと判断したのかも知れないが……

それから、当時のコリン・ファースが若くてポチャっとしていた、という点にも驚いたな。

最近の彼は英国王のスピーチやキングスメンの印象が強く、細くてシュッとした印象に変わっていたが、若い頃はこんなにポッチャリだったか??と、自分の記憶の曖昧さにも不安が残った。

それから、おそらくこれは万人に共通した主観的な感想、つまり、客観的な事実であろうと思うのだが…………メリル・ストリープは当時まだ57歳であるにも関わらず、彼女の孫がもう成人していそうに思えるほど老けていたという………あれではまるで私の母だよ………

なぜあんなおばあちゃんレベルな役作りをしたのだろうか、という大きな疑問符が私の頭頂でずっと揺れていたよ。

それから、アマンダ・サイフレッドだ。
彼女が娘役だったことを、2008年当時の私は全く気にも留めていなかったらしい。
今回、再鑑賞して初めて気付いたほどだ。

15年ほど前の映画なのだが、改めて観直したことにより、疑問点が大量に洗い出されてきてしまったので、柄にもなく調べてしまった。

原作&脚本も監督も女性なのだね。
監督さんの写真も拝見したが、なるほどな、と頷けたよ。

少女漫画のような脚本になっていた原因がやっと分かり、私の中では、良い意味で完全に腑に落ちたよ。

私はどちらかと言えばルッキズム派だが、それは、痘痕も靨(あばたもえくぼ)という意味においてだ。

だが、世の少女漫画と同様、ルッキズムにより辛い思いをしてきた女性にとって、この映画のようなノリと展開はきっと理想像なのであろうな、という想像は私もできるよ。

しかし、それはさておき、女性を味方につけると中身の無い映画でもこれほどまで売上が上がるという事実を見せつけられたことで、私は自分自身の人生を顧みてしまったよ。

なんと言えば良いのか、この映画はむしろその点にこそ驚かさせる作品だったように思う。


このくらいかなぁ。

あぁ、そうだ。
ピアースがゴールデンラズベリー賞最低助演男優賞をこの映画で受賞したことは非常に有名なエピソードだが、それでも彼は2021年に映画『シンデレラ』でその音痴ぶりを懲りずに再披露してくれている。

私は彼のそういうところが好きだな。

無論、彼の歌の場面でトイレ休憩をするのだが……
佐藤哲雄

佐藤哲雄