Kuuta

アンブレイカブルのKuutaのレビュー・感想・評価

アンブレイカブル(2000年製作の映画)
3.4
ミスターガラスの予習。平凡な人が才能に気づきヒーローになるまでを淡々と描く。今となってはDCユニバース等でリアルなヒーロー像を扱う映画も増えたが、こういう路線の先駆け的な位置付けにある作品。

カラーコーディネートが印象的。薄暗いモノトーンが中心で、その世界観に溶け込むような緑の服に身を包むダン(ブルース・ウィリス)。家の中も緑だらけ。ラストの展覧会で緑シャツに黄色のジャケットを着ているが、これはイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)が母親から最初にもらったコミックのヒーローの配色と同じ。

イライジャは浮世離れした紫。冒頭の病院の遺体からも分かるように、赤は血であり死。そこに罪のイメージが重ねられる(ダンが罪人と気付く相手は暖色系ばかり着ている)。

イライジャは反転や鏡越しでばかり登場する=この世ではない場所にいる存在。ダンも物陰越しのショットが多く、なかなかはっきりした姿が出てこない。彼が「彼本来の世界を正しく認識しようとしていない」姿勢が現れている。家族を優先するあまりフットボールを遠ざけ、そのモヤモヤから妻や息子にも結局よそよそしい態度を取ってしまう。特に最初の列車内のシーンは、漫画のコマ割りのようで面白かった。

善が生まれるためには悪がある(同じカーブの両端いる、表裏一体な関係。水という共通項)。イライジャは自分の居場所を見つけるためにダンを求めていた。一方でヒーローとして生まれ変わったダンは、奥さんを(2度目の)お姫様抱っこし、家族が再生する。ヒーローとしての戦いが物凄く泥臭く、あまりスッキリしにくい見せ方なのも意図的なんだろう。

映像も脚本も演出もとても丁寧だが、話自体は小ぢんまりとしていて見せ場も少ない。イライジャの全身複雑骨折は笑えたが、それ以外はシャマランにしてはかなり真面目な見せ方に徹していると思う。その点シックスセンスの衝撃を期待してきた観客がガッカリしたのもある程度は納得できる内容ではあった。「サイン」でもそうだったが、シャマランは水が嫌いなんだろうか。69点。
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