緋里阿純

007 ドクター・ノオ/007は殺しの番号の緋里阿純のレビュー・感想・評価

3.4
世界的大ヒットシリーズ『007』の正真正銘の第1作目。若き日のショーン・コネリーが、初代ジェームズ・ボンドを演じている。

有名な銃口を向けられるオープニング。その後のオープニング映像と音楽も、初代から既にオシャレ。勢いそのままに、盲目の浮浪者を装った殺し屋が、ジャマイカで活動中のMI6の諜報員ストラングウェイズと秘書を殺害し、ドクター・ノオに関する資料を奪い去る。ストラングウェイズの定時報告が途絶えた事に危機を察知したMは、ジェームズ・ボンドに現地への調査を命令する。
60年前の作品とは思えないスタイリッシュでテンポ良いオープニングシークエンスに、思わず唸ってしまった。

ただ、良かったのはそこまで。
今となっては失笑してしまうレベルの「それで大の男倒せてます?」と言いたくなる緩いパンチとのっぺりとしたアクション。
美女を取っ替え引っ替えしては体を重ねる女たらしのボンド。
終盤まで姿を見せずにいるドクター・ノオを「実は序盤から登場している誰かか?」と思わせておいて、いざ登場すると「誰?」となってしまう、本当に初めましての人物。
前述した今一つなアクションと分かりやすい大爆発でめでたしめでたしという大味なエンディングと、何から何まで前時代・前々時代的なアクションとストーリーテリングだった。

特に、ボンドを通じて描かれる“カッコイイ車乗り回して、いい女抱いてナンボ”な昭和的男の価値観は、今見るとあまりにも滑稽に映る。
『007』シリーズは、ダニエル・クレイグ版しか鑑賞した事がないのだが、クレイグ版ボンドシリーズが如何に現代的に洗練されてスタイリッシュに生まれ変わったものだったのかが見て取れる(特に『カジノ・ロワイヤル』と『スカイフォール』)。
まぁ、そこは流石に古い作品故仕方ないのだろうが。

とはいえ、若き日のショーン・コネリーの色気は凄まじいし、やたらと詰めの甘いドクター・ノオのやり口の数々が面白くはあるし、実は第1作から既に「スペクター」という悪の秘密結社の存在が示されているのには驚いた。
今はなき、古き時代の価値観やアクションを見る意味では一見の価値アリかもしれない。
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