イホウジン

007 ドクター・ノオ/007は殺しの番号のイホウジンのレビュー・感想・評価

3.6
オトナのヒーロージェームズ・ボンド、ここに誕生

007の初見は記念すべき第一作にしたが、今作を最初に観て正解だった。今後の物語はまだ知らないが、少なくとも今作がどうして半世紀以上続くメガコンテンツになったのかを推測できたからだ。まだ“007”という呼称すらはっきりと定まっていないオープニングながら、今作が未来永劫に続く人気シリーズになるのは容易に想像がついた。つまるところ、今作の最大の魅力はジェントルマンと子供っぽさを併せ持つ、完璧なまでの“ジェームズ・ボンド”像である。
ある意味今作はそれを鑑賞するであろう年齢層に対して、自らの潜在的な“子供っぽさ”を炙り出すことに成功しているように思われる。確かに彼はまさに誰もが思うジェントルマンだし終始クールな素振りで任務を遂行していくが、敵か味方かも分からない人物への探り合いや敵のアジトのいかにもな秘密基地感など、決して完全な“大人向け”スパイ映画として描かれていないのは事実であろう。しかしだからといって今作が子供向けの映画とは言えそうにない。情報のためなら体さえも使う映画を子供に見せる訳にはいかないだろう。つまり今作は、このオトナとコドモのバランスの調整に成功した作品とも言えるのかもしれない。どんなにジェントルマンになっても子供のような行動力を失わないボンド像に当時の英国紳士たちは心奪われたことだろう。

今作の評価はあくまで相対的なものである。映画単体としては、やはり展開に無理がある。ボンドガールの登場もびっくりするぐらい唐突だし、何より放射性物質をシャワー1回で除去できていれば、今頃世界はこんなに苦労することはなかったであろう。ヴィジュアル的には楽しめたが、それ以上のものは無かった。
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