とり

スリーピー・ホロウのとりのネタバレレビュー・内容・結末

スリーピー・ホロウ(1999年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

大阪梅田のナビオ阪急(当時)で観たんですが、終了間際に焦って夜勤明けのヘロヘロで駆け込んだのが忘れられません。
こういう状況は他にもないわけじゃないけど、何しろずーっと朝もやがかかったような映像だったのがその時の自分と妙にマッチしててドップリはまりこんだんです。寝不足で意識が今にも遠のきそうで頭の中にモヤがかかってたのに映画でもそんな状態とは!!って感じ。
がしかし、作品自体は物凄く面白くて超ツボだったので寝るどころではなく、おなか一杯堪能しました。

確か公開当時は出演者クレジットにクリストファー・ウォーケンの名がなく、シークレットゲスト扱いだったと思うんですが、鑑賞中突然登場した時は超感激!相変わらずキワモノ役ですが、まぁ本作では「いつもいつも作品も役柄も選ばない人だなぁー」とは思わず。出番はそんなに多くはなかったけれど、とっても印象深く重要な役どころ。ヘンな髪型は健在で嬉しかった。

そして主役のジョニー・デップは、病的な役柄を任せたらハマリすぎるところは相変わらずで印象的でした。
が、ヒロインのクリスティーナ・リッチの凄まじい魅力オーラの方が勝っていたように感じました。彼女が出ている時はもうただただその魅力に引き込まれて見つめてるだけ。「バッファロー'66」のリッチも素敵でした。

そしてほぼチョイ役になってしまうけどNY市長としてクリストファー・リーが出演。今でこそ見事に復活したおじいさんですが、この作品に登場するまではけっこう埋もれてしまってたんですよね。往年の怪奇映画の名優という過去の遺物になってました。バートン監督としては彼を使えて本望でしょう。
往年の怪奇映画といえば、終盤で登場する風車。これはバートンらしいシンボリックなものですが、そもそもの話でいえば「フランケンシュタイン」にさかのぼるんですよね。

ストーリーはまぁ民話からきているということでオーソドックスな感じはするけど、バートンらしい映像センスと語り口でストーリー自体はほぼどうでもいいと感じてしまう。
後日、原作も読んでみましたがかなりあっさりしているので、脚色や肉付けがされて映画はほぼオリジナルに仕上がってます。

バッサバッサと飛びまくる首、女子供でも容赦しない、小道具たちがやたら悪趣味、ある意味好奇心いっぱいの子供がそのまま大人になったような監督の姿が垣間見えます。
首切りシーンもよくできてます。一瞬で焼ききっているという説明通りの演出にくわえ、シャキーン☆という剣の効果音のゾクゾク感がたまりません。
首なし騎士ホースマンのカッコ良さを全力で押し出してるのがよくわかります。本当は悪なんだけどカッコいい。ヒーローものの悪役がカッコいいのと同じ理屈でしょう。愛馬デアデビルを駆る姿や剣と鎌を両手に持つ二刀流など、監督に相当愛されちゃってます。

そして映像美の中でも究極に美しいと感じたのが騎士の眠る大木。造形はもちろんのこと、ロケーションもいいし、血がにじみでるシーンも、騎士が穴から愛馬とともに発進するところも凄く素敵です。
ラストのオチも個人的に大満足で、この上なく気分爽快な上に穴に戻って行く時の血のグッチョリ感に感動すら覚えてしまいます。
その後のデップたちのシーンがあるけど、私としてはこの木のシーンが本当のエンディングだと思ってます。

血といえばデップの母親のシーンはどれも幻想的で不気味な空気が醸し出されていて居心地悪さ抜群でした。それなのに(それゆえかな?)不思議と惹き付けられるシーンでもありました。
この母は確か監督の当時の奥さん?彼女だったと思うんですが、拷問シーン撮影対象にするなんて相当の変態?(笑)
この時の拷問器具はアイアンメイデンと言われる人型の鉄製カプセル。中に無数の針が仕込まれていて、中に人を入れて蓋をすると同時に体中に穴が貫通する仕組みなんですよね。どうも即死ではなく死なない程度に針をつきさすよう調節できるらしいので、おそらく今回の母はそのように調節されてジワジワ殺されたんでしょう。

この映画よくゴシックホラーと言われてるけど、私としてはバートン色のおとぎ話・ファンタジー映画だと思います。しかも遊び心のちりばめられた軽いタッチの。

ちなみに原作では、デップが演じた男(軟弱教師)は首なし騎士に連れ去られたようだ…
しかし実際には臆病かぜに吹かれ、村も美女も振り捨てて近隣の町で教職を続けてるのはナイショだぞ☆的な終わり方。

ナビオ阪急梅田(現在はTOHOシネマズ梅田)
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