T太郎

フローズンのT太郎のレビュー・感想・評価

フローズン(2010年製作の映画)
3.7
1027
サスペンス・スリラーの佳品。
想定外の面白さであった。

スキー場のリフト上に取り残された、男女3人の悲劇を描いた物語である。

私は運動神経抜群、あらゆるスポーツに精通している男として有名だが、唯一、スキーだけは未経験なのだ。
からっきしなのである。

だが、なぜかスキー場に行った事があり、リフトに乗った記憶もある。
これは一体どういう事なのだ。
非常にあやふやな記憶なのである。

確かにリフトに乗ったのだ。
ビビりながら乗った事だけは鮮明に覚えている。
なんせ極度の高所恐怖症なもので。

しかし、そこに至る経緯や具体的な場所などの記憶が全くないのである。
なぜ、そんな所に行ったのか。
誰と行ったのか。

子ども時代の話ではない。
立派な社会人になってからの出来事なのである。

なぜ、こうも記憶が曖昧なのか。
私の記憶力は一体どうなっているのだ。

そう、私の脳に海馬は存在しないのだ!

おっと、冒頭から珍しく話が脇道に逸れてしまったようだ。
(いつもやで)

つまり、スキー未経験者でありながら、私はリフトの恐ろしさを重々承知しているという事なのだ。
知らぬ間に、この作品を観る資格を付与されていた訳である!
(誰でも観られるよ)

さて、この作品だ。
主な登場人物は3人の男女だ。
役名を失念してしまったので、仮に
 太郎(仮名)
 よし子(仮名)
 ジョー(仮名)
としておく。

太郎(仮名)とよし子(仮名)は恋人同士だ。
また、太郎(仮名)とジョー(仮名)は幼なじみであり、親友である。
そして、ジョー(仮名)とよし子(仮名)は、あまり親しくない。

太郎(仮名)とジョー(仮名)は、スキー旅行を毎年の恒例行事としている。

今年はそこに、スキー初心者のよし子(仮名)が加わった訳だが、ジョー(仮名)はそれが面白くない。
ブツブツブツブツ文句を言うのである。

映画などでよく見かける、仲良しグループではないのだ。

だからなのか、前半は登場人物に全く好感が持てない。
巷間よく言われる“感情移入”とか“共感”できないタイプの人々だと言えよう。

この3人がリフトに取り残されるのだが、そもそもリフトに乗った手段が小ずるくもセコい。
ある意味、自業自得と言えるのである。

そんな3人だが、置かれた状況は単純にして絶望的だ。
只々、お気の毒としか言いようがない。

場所はスキー場、極寒の地だ。
夜は更け、寒さは募るばかり。
吹雪も近づいているという。

彼らは身動きもろくにできないリフトの上。
次の週末までスキー場は閉鎖だ。
つまり、5日間は誰も来ない。

だが、彼らにそんな時間はない。
5日後にはカッチンコッチンになる運命なのだ。
後で解凍してどうにかなる問題でほない。
彼らは精肉ではないのだ!
ましてや、鮮魚でも!

ここで太郎(仮名)は、ある決断を下す。
今のうちに何とかしなくてはならない。
リフトから飛び降りて、助けを呼ぶのだ。
よし、飛び降りるぞ!

しかし、彼は受け身の心得がなかった。
もろに足から着地した結果、折れた骨が皮膚を突き破り、激痛でのたうち回るはめに陥るのである。

実にお気の毒なのだが、本当の地獄はこれからなのだ。

そう、夜の雪山にはオオカミが出没するのである。
血に飢えたオオカミの群れが太郎(仮名)に襲いかかる。

太郎(仮名)の運命や如何に!

よし子(仮名)とジョー(仮名)は、一体どうなってしまうのか!

そんな物語である。

つい最近、タイ映画の「ザ・プール」という作品を鑑賞させていただいたが、かなり面白かった。
あれと同系統の作品だと言えよう。

絶望的な状況と凶暴な野生動物の組み合わせ。
もはやこれは、映画界のゴールデンコンビと言っても差し支えないであろう。
(そうか?)

こういう作品の常で、評価はあまり高くないが、私は十分に楽しませていただいた。

登場人物に好感が持てないとか、グロい描写があるからとの理由で低い評価を下す事は、いささか的外れな行為だと言えよう。

私クラスともなれば、物語の本質を見極める目を持ち合わせているので、そんな事では評価にブレは生じないのだ。
さすが私だと言わざるを得ないであろう。

更に言うと、お色気シーンの一つでもあれば、私の評価はうなぎ登りであったはずだ。

そこが唯一、残念な点である。
T太郎

T太郎