荒野の狼

1978年、冬。の荒野の狼のレビュー・感想・評価

1978年、冬。(2007年製作の映画)
4.0
2007年の101分の中国映画で、地方の兄弟(兄、リー・チエ:弟、チャン・トンファン)と、北京から引っ越してきた娘(シェン・チアニー)との関わりの中で起こる日常的な出来事が静かに描かれているのだが飽きずに鑑賞できる作品。1978年からの一年間の話で、文化大革命が1977年に終結して一年後という設定であるが、時代を感じさせる政治的な要素としては、娘の父が反革分子であると噂されたり、台湾の領土である金門島への砲撃が中止されたニュース(1979年のこと、ちなみに金門島を描いた映画に「軍中楽園」がある)が流れたりといった以外はない。当時の地方庶民の生活(人民服、共同作業への参加、主人公が18歳で徴兵)は巧みに物語に織り込まれている。
上記の時代・地方背景を味わえるのが本作の魅力であるが、娘と兄の淡い恋愛や、ほとんどセリフはないにも関わらず純粋で朴訥な弟(同級生からの理不尽ないじめ、母親と兄の無理解にもけなげに耐える)には、時代や国を超えて共感するところ。弟役のチャン・トンファンと娘役のシェン・チアニーは、出演陣の中でも登場するだけで独特の存在感があり、演技もよい。
荒野の狼

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