彦次郎

わが青春に悔なしの彦次郎のレビュー・感想・評価

わが青春に悔なし(1946年製作の映画)
3.6
思想弾圧事件(滝川事件がモデル)で失脚した大学教授の娘幸枝(原節子)が彼女に好意を持つ2人の青年との関わりから人生が変わっていく人間ドラマ。どこかの世紀末覇者の台詞みたいな仰々しいタイトルですが当時は流行したようです。
2人のうちの1人野毛は左翼運動に投じる事になり彼はゾルゲ事件で死刑に処されたスパイ尾崎秀実氏がモデルだとか。
始まりとなる昭和8年は実は日本経済が豊かな時(高度経済成長期前は目標にされていた)からなのか明るい雰囲気が反映されています。そこから歴史に沿うように暗い展開となりますが戦前の軍国主義から敗戦後の民主主義への変転を礼賛したようにも見えました。
幸枝の危険人物(日本政府から見て)への異様な惚れ込み方と義両親の元で迫害を受けながらも一緒に暮らしていくストイックさは少し恐いものがありますが耐え忍び生き甲斐を見つけていく凛とした姿は気高く美しく原節子氏の演技力が発揮されていたと思います。
モノクロ且つ主に戦前の話とあって歴史的隔たりを感じますが農村の幸枝への対応は日本人の持つ閉鎖的なダークな面であり現代(視聴時は2023年)にも十分通じる普遍性といえましょう。
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