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東京オリンピックのTSのレビュー・感想・評価

東京オリンピック(1965年製作の映画)
3.8
【偉大なる人類の祭典の記録】80点
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監督:市川崑
製作国:日本
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:170分
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1964年の東京オリンピックを収録した伝説的なドキュメンタリー映画。市川崑の趣向が入っているため賛否両論あるようですが、様々な競技とそれに真摯に向き合う選手を誠実に映し出した作品だと思いました。僕が見たのはディレクターズカット版みたいのでして140分程でしたが実際は170分近くあるようです。

日本画高度経済成長の頃、神武景気、岩戸景気、いざなぎ景気を迎えていましたが、その間にオリンピック景気というものもありました。オリンピックの経済効果は計り知れないものがあり、2020年の東京オリンピックの経済効果は約30兆円とも言われています。ただし、一時的なものがあり、14年前にオリンピックが行われたアテネは再び経済悪化を辿っていますし、オリンピック会場が数世紀前の廃墟みたいなものと化してしまっています。
ともあれ南極を除く5大陸で開催することを基本理念とするオリンピックは、ついに東アジア初の会場として東京を選びました。聖火リレー、開会式から始まり、様々な競技が行われるのです。

開会式は現代の目線から見るとパワーダウンするかもしれませんが十分に迫力がありました。競技自体のレベルは現代と変わらない気もしますが、やはり50余年前ということなので少なからず時代差を感じる部分もあります。特に終盤のマラソンの休憩スポットのシーンなどでは、アイテムがやや古いなとか思われましたし、微妙な差に気づくのも今作の醍醐味かと思われました。

第二次世界大戦を終えた世界は病んでいました。日本に至ってはあたり一面焼け野原。そんなところで国を再興できるのか。当時の若者は血眼になり働き、自分から動き、敗戦国とは思えないほどのスピードで成長していきました。一方、それ以外の国も世界が一つになることを願い、その一つの材料としてオリンピックを推進していきました。ソ連とアメリカの冷戦、それに連鎖するベトナム戦争などもありますが、確かに人類は過去の過ちを理解し、人類が一つになることを試みたのでしょう。オリンピックやワールドカップはその理念に合致する大変素晴らしい競技と思います。

もし宇宙人がいたら、この四年に一回オリンピックを開催し人類が競い合うということに大きな疑問を感じるかもしれません。しかし、これは人類が一つになるための過程でもあるのだと思います。
淡々としているため飽きてくる部分もありますが、これは完全に記録映画であり、加えて市川崑の趣向がふんだんに入れられた芸術作品でもあります。2020年東京オリンピックが開催される前に一度是非ご覧あれ。
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