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アイデンティティーのRenのレビュー・感想・評価

アイデンティティー(2003年製作の映画)
2.0
自分の「どんでん返しの好き/嫌い」基準も文字にして残しておこうと思ったので初レビュー。所謂どんでん返し映画として有名な作品の中でも特にハマれなかったほうの作品。

どんでん返ししたいためのどんでん返し。叙述トリックを使いたいための叙述トリック。叙述の中でも、観客を驚かせること以外の必然性が希薄なものを観ると残念な気分になってしまう。そんな見せ方する必要なかったよね?が85分続く。そして残り5分でなんとなく腑に落ちる。

劇中で起こる全てがラストのための前振り。大雨でクセ者たちがモーテルに閉じ込められ殺されていくベタすぎて笑えない設定にしたこと自体にも意味はあるのだけど、だったらせめてそこを面白く見せてくれ。どんでん返しに突入するまでのストーリーがそもそも面白くなかったときのジャッジは厳しくいきたい。
並行して進む片一方のエピソードが弱く、種明かしされたところでそこまで盛り上がらない。想像の斜め上を行った瞬間の爆発力もあと一歩欲しかった。

プロット自体は『そして誰もいなくなった』の100番煎じ、モーテルの雰囲気や殺人シーンを直接見せない演出はモロに『サイコ』。
もし映画にサプライズを求めるのであれば、鮮烈かつ構造に意味のある『ファイト・クラブ』や、サスペンスとしてちゃんと面白い『シャッターアイランド』とか色々あるので、とにかく驚きの映画体験がしたい!という方で上記の作品を未見の方はそちらを観てほしい。

ただ騙されたからそれだけで高評価とかされなかったから低評価とか、それだけの視点で映画を観たくはないと思った。叙述自体は好きだけど、だからって何でもいい訳ではない。
今作に『アイデンティティー』とタイトルを付けた攻めの姿勢は評価したい。



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》










地獄の『インサイド・ヘッド』。
オチからして、別に今作は真っ白な部屋で一人ずつ死んでいくのでも話は成立するけど、それだと地味だからこんな感じになった。殺人鬼人格の醸し出す不穏さ、そして設定をベタにすることでメインプロットに集中させる構造。一応理には適っている。
余談だけど、こういう「“敢えての“ ベタ構造」映画は『キャビン』で頂点を迎える気がする。

2段階目のツイストだけは、ちゃんと物語的に納得のいく展開で良かった。殺人鬼が死刑を免れるための理由ある驚き。ただそれも、今作の7年前に公開された某法廷サスペンスとアガサ・クリスティの某作品の美味しいところ取りみたいなオチなので、そこまで評価はしないけど。
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