イホウジン

007/ゴールドフィンガーのイホウジンのレビュー・感想・評価

007/ゴールドフィンガー(1964年製作の映画)
2.8
ただのキモいセクハラ野郎と化したボンド

一応作品の名誉のために先に良かった点を言っておくと、舞台が転々とするテンポの良さや過去作以上にボンドが敵に追い込まれるスリリングな内容など、スパイ映画としての完成度がいよいよ高まったことを実感できるものだった。音楽の効果も相まって、いよいよシリーズとしての007の“王道”が定まってきた様子だ。

ただ、今作のボンドは出会う女性への扱いが酷すぎる。仮にも過去2作は活動を共にする中で着実に愛を育んでいた(とはいえ次作にはほぼ影響がないのでクズ男といえばそうなる)が、今作に登場人物する3人のボンドガールは、完全にボンドの個人的な性的欲求を満たすための“道具”である。もはやフラストレーション解消のための手段となった彼女たちに対して彼は一人の人間として尊重する気がないようで、うち2人は殺されてしまう。自分のミッションに半ば強制的に巻き込ませて死なせてしまうようでは、殺した側の連中とボンドに大差はない。そこら辺についての反省の描写は一切なく、まるで2人が存在しなかったかのように3人目に手を出すあたり、本当に人として終わってる。その3人目に対しても、本人の同意を得ずに一方的にイチャイチャし始めようとするから余計に腹が立つ。彼女は一人でも十分に生きていけるだけの地位を持っているはずなのに、意地でも“支配”しようとする絶体絶命のボンドは実に情けない。

せっかくの良作がボンドのクズっぷりで台無しだった。
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