昨日「狂熱のライブ」を観たら、「ウッドストック」を観たくなって、ジャニスの出番がカットされてないディレクターズカット版を鑑賞。そしたらジャニスをもっと観たくなって、1974年のドキュメンタリー「ジャニス」を鑑賞。そしたら「ローズ」を観たくなったで、さっきまで観てました。
何か、しりとりか連想ゲームのような鑑賞方法だったな。
高校の時にテレビで観て以来、約35年振り2度目の鑑賞。
サントラを繰り返し聴いてきたので記憶が褪せなかったか、だいぶ克明に憶えていた。
本作が、ジャニス・ジョプリンをモデルにしたフィクションであるというのは有名ですが、調べてみるとそれどころではなかった。もともとは事実に基づくジャニスの伝記映画として企画されたものだったようです。
で、その時点で主役に抜擢されたベット・ミドラーの「亡くなってから間がないから、まだ実話にするには早い」という意見をもとにオリジナル・ストーリーに書き換えられた。
タイトルも、もともとはがっつり「パール」だった。「パール」はジャニスのニックネームだし、何と言っても遺作のタイトルですね。
まあ、でも誰がどう見てもジャニスの生涯にしか思えないように作ってある(細部は全然変えてあるけれど)。
ベット・ミドラーはジャニスの2歳下。芸能活動は二人とも1966年から始めているが、ジャニスは翌年モントレー・ポップ・フェスティバルに出て、いきなりスターダムに登り詰めた。
ベットはその頃は、クレジットに名前も出ない端役の女優。また歌手としてのデビューは1972年。もうジャニスはこの世にいなくなってる。
で、その後歌手としてのキャリアと、舞台でのキャリアを重ねて、1979年本作で映画初主演。
タイトル曲は言うまでもないとして、曲が全部素晴らしいですね。
ジャニスのようなコッテコテのブルースじゃなく、もっとポップ・ロックな歌手と言う設定になっていますが、さすがのベット・ミドラー。
中でも「男が女を愛する時」の最後にJBの"This is the man's world"を抛りこんでくるところが良い。
ただ、途中のオカマ・バーに出てくる「ローズのそっくりさん」の歌声のほうが、ジャニスにかなり近いですね。
このバーには、「バーブラ・ストライサンドのそっくりさん」もいます。ちゃんと「ファニー・ガール」の"Hello, Gorgeous"を言ってる。あ、ってことは、この人は「『ファニー・ガール』でファニー・ブライスを演じたバーブラ・ストライサンドのそっくりさん」というややこしい設定なのかな。
ローズはというと、"Hello, Gorgeous"ではなく"Hello, Motherfuckers"がステージの挨拶。
ジャニスはそこまで扇動的ではなかったけどさ。
改めて観ると、最後の凱旋コンサートがジャニスへの鎮魂歌に思えました。
実際のジャニスは、生まれ故郷のテキサス州ポート・アーサーでは、凱旋コンサートをしていません。
代わりに、1969年8月に高校の同窓会で里帰りしている。どうやらジャニスは、高校時代「キャリー」みたいに扱われていたらしく、同窓会への出席は、彼女を蔑んでいた連中を見返してやるつもりじゃなかったかと想像します。
ただし、これには取材陣が多数押し寄せ、ジャニスを囲み込んでインタビューをしたので、同窓生たちは遠くからジャニスを見てるだけ。
これは映像で残っていますが、その同窓生たちの表情や振る舞いには、ジャニスへのよそよそしさしか感じられない。
ドキュメンタリーの「ジャニス」で見ることができます。
この映像、見ててほんっとにキツいです。
取材陣に悪意はないんだろうけれど、「久しぶりの故郷、みんなに会えて嬉しいでしょ?」ってテンションでずっと質問してる。
「高校の頃からみんなを楽しませてました?」
「みんなが笑うのは、私が廊下を歩いているときだけよ」
冗談めかしてジャニスはいうんですが、もうその表情が、見ててつらいのなんの。
ジャニスが(最近疑問が呈されていますが)薬物の過剰摂取で亡くなった、つまり「27クラブ」に入ってしまったのは、この同窓会の僅か2カ月後のこと。
もう、何だか堪りません。
「パール」に収録されている「生きながらブルースに葬られ」がボーカルなしのインストゥルメンタルなのは録音する前にジャニスが亡くなったからですが、遺体が発見されたのが、その録音予定日当日だったってのがねえ......。
これ「Buried Alive in the Blues」という原題の直訳なんだけど、この題名もやるせない。
曲調自体はジャニスの中でも最上位に楽しいナンバーなんだけどさ。
翻って、本作のローズは、故郷での凱旋コンサートで暖かく受け入れられます。
ここ、エキストラが凄いですよ。観客、どんだけいるんだ?! って規模。
ローズが客席に向かって言う。
「Do you forgive me?」
客は拍手で持って、それに答える。
満足げに、にっこり笑ったローズは、続けて「...I forgive you」。
これって、ジャニスが果たせなかった想いじゃないのかな。
そう思ったら、もう号泣。
あと、おれ、デヴィッド・キース好きだったなあ(ややこしいけど、キース・デヴィッドとは別の俳優さん)。
「愛と青春の旅だち」でトイレで自殺しちゃうシドを演じた役者というとピンと来る方も多いかも。
(余談だけど、「人間の條件」の田中邦衛もまったく同じ死に方でしたね)
この人、映画のキャリアも少ない脇役で、本作でもセリフすらほとんどないんだけれど、物凄く印象に残ってる。
凱旋コンサートを脇で優しく見つめている顔も記憶通りだったし、何よりも本作の最後はこの人で終わるんですよね。
最後に実にどうでもいい話をひとつ。
私のハンドルの"keith"は9割キース・リチャーズにあやかってるんですが、1割くらいはデヴィッド・キースを意識しております。