めしいらず

木を植えた男のめしいらずのレビュー・感想・評価

木を植えた男(1987年製作の映画)
3.5
白地の画面に絵が浮かび上がってくるような映像の凄み。この圧倒的な美しさはアニメーションでしか表現し得ないものだろう。画面の隅々にまで心が通って見える。
木を切り倒し、山を切り拓いて発展してきた人類の行く末。悪化した環境。悪化した人間関係。そしてより良い場所を奪い合い、争いを繰り返すのである。そんな人々に背を向けて山にこもり、人生をかけて荒地に木を植え続けた羊飼いの男がいた。世間から隔絶した場所で全くの一人で生きてきた。そんな彼と偶然出会った若者との、二つの大戦を挟んだ交流の歴史。一度として弱ったり、迷いのために祈ったりする姿を見せなかった男の不屈の精神は、永い永い年月をかけて荒地に再び緑をもたらすのだった。彼は「人間は破壊以外の領域で神と同じくらい有能であり得る」のだと証明して見せたのだ。この映画には過ちを繰り返してばかりいる人類への諦めきれない信頼の形が示されていたのだと思う。
再鑑賞。
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