mirei

愛と死の記録のmireiのレビュー・感想・評価

愛と死の記録(1966年製作の映画)
4.0
「愛と死の記録」1966 蔵原惟繕 監督

やっと鑑賞ができた、なぜかよく行く高田馬場のTSUTAYAにも板橋のTSUTAYAにもなかった、AmazonプライムにもNetflixにもなかったが、YouTubeで購入ができた。

渡哲也追悼特集第3弾、愛と死の記録。
次は、長崎ぶらぶら節をお送り致します。(本人とても楽しんでおります。渡哲也がなくなってしまった後に彼の事をこうやって知るというのは少し寂しい気もしますが、今回とても良いきっかけになりました)
吉永小百合と渡哲也のタッグ、私は浜田光男と吉永小百合のタッグがとっても大好きだ、あれ以上のカップリングはないと思っている、そんな私が今回観賞するという事で、この映画への期待のハードルがかなり高めだった。

(ここで突然だが、出演しているはずの中尾彬がどこにいるのか全く分からなかった。第2回戦観賞大会の際に必ず彼を見つけると心に決めた)

監督は蔵原惟繕監督。キタキツネ物語や南極物語といった自然や感動物を得意とする監督だと私は思っている。彼の作品を他に調べてみると石原裕次郎作品がかなり多い。「硝子のジョニー」気になる、是非観賞しよう。

舞台が広島である、第2次世界大戦中に原爆が落とされた広島の光景がかなり鮮明にまだ残っている時代だ。そうは言えど復興が早い、さすが日本。高度経済成長期頃の作品だと思うが、橋や建物などがどんどん新しく建っている、そこにポツンと佇む原爆ドーム...実際にここに原爆が落ちたのだ。

吉永小百合は関西弁が非常にうまい「愛と死を見つめて」でも確か大阪か京都の出の少女を演じていたとは思うが、彼女の関西弁はとても自然だった。関西人の私が言うのだから絶対自然だ。てっきり私は彼女さ関西人なのかと思っていたが、Wikipediaで東京生まれだと知り驚いた。

物語は吉永小百合演じる松井和江と渡哲也演じる三原幸雄が出会い、恋に落ち、純情な恋愛を順調に育んでいく。
ところどころ不穏な音楽や空気が流れる、舞台が広島だから何かしら原爆と関連づけるのだろうかと思っていたら、やはり原爆症という悪魔が彼を襲う。

病弱なイメージといえば、吉永小百合だと思っていたが、まさか今回は渡哲也がその役をするとは...置いていかれる吉永小百合を見るのは慣れてなくてぐっとくる。
雨の中「降りてくれよ」とバイクから無理やり彼女を下ろしてしまうシーン、吉永小百合が後を追いかけようとするとバイクが走り出してしまい、その弾みで転けてずぶ濡れになり、とぼとぼと歩くシーン。
吉永小百合だからこそ映えるあの場面、サユリストの私からすれば愛おしくて仕方がなかった。性癖に刺さった。

階段を登る彼、関節が痛いせいか歩き方がおかしくなる、ここからもう原爆症の症状は始まっていた。そんな場面で彼が彼女との結婚を思っているという話をするのはとても惨い展開だった。
(作品を見ながら原爆症という症状、病気について調べてみた、かなりグロテスクな映像を見ることもあり、気が滅入ってしまった。そういえばはだしのゲンにもそういう場面があったなと思い出したが、確か原爆症は遺伝するものであると聞いたことがある。ということは、現在もこの病気に苦しんでいる人がいるのだろうか、アメリカ軍は一体何を落としてくれたんだとこればっかりは永遠に腹が立つ)

倒れてしまった彼が。ここからはどんどん悲惨な展開になっていく「愛と死を見つめて」と同じような展開だ。おそらく私はこの辺りで渡哲也が浜田光夫に見えてきていた。

2人が抱き合う後ろの石像に「父をかえせ、母をかえせこどもをかえせわたしをかえせ人間を返せ、人間が人間の形をしている人間を返せ」と書いていた。広島は前を向いている、だが時は止まったままなどだということを伝えているかのように思えた。

当時たった20年前に原爆が落ちていたということがすごく恐ろしく感じる。今は75年前、遠い昔遠い遠い昔の事だと思えるが、20年前など歴史でもなんでもないただの過去なのだ。

原爆ドームの中で語り合う2人、
「お前は資料館の中を見たか」
「ええ見たわ」
「恐ろしかっただろう、放射能がいかに恐ろしいかわかるだろう」
「ええ分かるわ」
「それが俺の中にいるんだ」
「いやよ」
「だけどこれが事実なんだ、原爆病院に僕は帰る」

幼い頃に1度原爆症で入院したが、回復が見られ退院、そして何年も経った後にまた再発。原爆症というものはこういうものなのだ、じわじわと体を蝕んでいくのだ。

深夜の2時に見るのは馬鹿だった、怖くなって眠れなくなってしまった、それ程原爆ドームで2人が話しているあの空間は恐ろしかった飲み込まれた。1度も原爆投下の映像も被爆した人々の映像も流れなかった、その何人、私の脳裏には様々な映像が流れた。

ラスト驚愕した。悲しみに悲しみをぶつけて悲しみのまま終わる映画であった。私的には前を向いていて欲しかった、彼の分まで生きていて欲しかった、生きる事を辞めないでほしかった。

生きたくても生きれなかったひとの想いを私達は、どうやって整理すればいいのか。答えは分からない、正解は分からない。
だけど、きっと死ぬ事ではないのだと私は思う。
彼らの分までなんて大層な事は言えないけれど、彼らのように必死に生きる事は出来る。いつか来るさようならの日まで私は生きていたい。
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