グラビティボルト

嵐を呼ぶ十八人のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

嵐を呼ぶ十八人(1963年製作の映画)
3.7
鑑別所上がりの肉体労働者を撮る映画というと、如何にも社会に対する目線が強く打ち出されそうだけど、そこは流石吉田喜重。
ただ、スレた男達を有りの儘に撮るという一見風情もへったくれもない、しかし作家としては至極精密なジャッジをやって退ける。見事。

あの、広島球場で再会する男女の距離感、フェンスを掴む女の指が、あの暴力の場面の指と重なる感覚、
海で自殺を図る青年への距離の取り方、何からなにまで圧倒された。
あんだけ巧く距離を取って構成された映画なのに、終盤の結婚式場前(雨)と列車を見送る駅のロングに満ちる情感に息を呑む。やられた