グラビティボルト

RHEINGOLD ラインゴールドのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

RHEINGOLD ラインゴールド(2022年製作の映画)
3.9
良作。ファティ・アキンが根本に抱えているであろう生真面目さがきっとプラスに出ていつつ、ジャンル横断もしてて野心的。
冒頭、主人公のカターが産まれる前、
身重の母親が紛争地帯を疾走して蝙蝠が飛び回る洞窟で出産する場面のやり過ぎ具合からして最高!
成長し、金銭の為にヤクを売り捌くようになったカターが、ヤクを強奪したチンピラに復讐しようとボクシングジムで裏路地のケンカ殺法(喉突きからの急所攻めなど)を習得して復讐する場面は
引きのショット主体で殴る、蹴るを撮っていく身も蓋もない迫力が「ディストラクションベイビーズ」ぶりの野蛮さで見入った。

ここからヒップホップスター街道にまっしぐら!とは行かず、自分の音楽レーベルを成立させる為にクラブで入場待ちしている女に暴言&ビンタでアムステルダムのギャングに名を轟かせたり、全く倫理的でない、社会福祉に無視されたクルド系移民という身の上を考慮しても全く擁護出来ないワルとしてカターが増長していくエスカレーションがまさに映画!
で目が離せない。
金塊強盗の場面で、警官のバレバレな変装をしてたら本物の警官を誤魔化せてしまう不条理さも堪らん。

あと、冒頭と繋がる金塊強盗の場面を手持ちビデオカメラ視点で捉えるんだけど
これが単なる臨場感ではなく、刑務所からデビューシングルをリリースする時のPVとして再利用されるのがとても綺麗なシナリオ。
「女は二度決断する」「屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ」しか観てないけど、
内面のバランスを欠いた市政の人々がどう生きるのか?に執着する傾向がある
ファティ・アキンが絶対相性の良いヒップホップと結びついたホームランみたいな映画だった。
ラストショットのインディジョーンズみたいな嘘臭さも、本当っぽい実録ではなくて映画をやりたい、魅せたいという志向がストレートに出てる。