そのじつ

わんぱく王子の大蛇(おろち)退治のそのじつのレビュー・感想・評価

5.0
すばらしいぃぃぃぃぃぃ(ToT) 自分の記憶にあるのはこの10年ほど後の東映アニメになりますが・・・この洗練されたデザイン性、迫力のあるカット割、スピード感、舞踊のしなやかで美しい演出、子供・動物の動きの愛らしさ・・・アニメーションの醍醐味が満載です。

人物の頭身のバランスは足が短く銅から上が長いのだけど、それはまるで埴輪のバランスのようで不思議と親近感が持てる。またテーマである日本神話と統一性のあるものになっている。そんな行き届いた目線にまた感じ入ってしまう。
敬愛する森康二の仕事を堪能できる至福のひとときだった。

ヤマタノオロチの頭八つがそれぞれ独立した動きで禍々しく波打っているシーンの迫力は半端ない。最新のアニメでもこんなインパクトを出せるものはそう無いと思う。エヴァンゲリオンの使徒襲来的な不気味で禍々しいフォルムと動きであった。

海面の荒れ狂うさま、空の色が赤黒から闇に変わっていくさま、山水画のようなそびえ立つ峻厳な山々の神々しさ、野原に咲き乱れる花々のひとつひとつ名前がわかりそうな描写力(でいてデザイン性は失われていない)、どれもこれも非常にレベルの高い仕事になっている。

絵や動きだけでなく、須佐男の物語を子供向けにアレンジしたのだな・・とたかを括って見始めたらビンタ食らったくらいハッとした。
神話を読むと須佐男の性格が破綻していてたびたび驚かされる。挿絵やなんかで成人男子に描かれている彼の行動は大人と思えぬほど感情的でワガママで暴力的すぎるのだ。

それをこの映画では彼を小さな子供として位置付けた。
子供であるがゆえの純粋さを見せ、暴力的側面は授かった力のコントロールをまだ覚えていない幼さとして描き、彼がほしいままに振舞うのを父や姉や兄が時に嗜め、時に一歩引いて見守る様子で包み込んでいる。
メインターゲットであろう子供は共感したりハラハラしつつ安心できるし、同時に大人も家族の関係性に心揺さぶられる。細やかな意味づけや、物語一本とおして描かれる感情の流れの説得力が本当に素晴らしくて、シナリオや演出(助手として高畑勲も)の妙に感服した。

音楽の伊福部昭節もこの破壊神にピッタリ!破壊神VSキングギド・・もとい八岐大蛇。すべてのスタッフの仕事のハマり具合がこれ以上ないもので、同時代の日本映画と同じくらい贅沢で豪華な気分をあじわった。

前半に船でこぎだすシーンで「モアナや・・」と思った。
そのじつ

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