彦次郎

パプリカの彦次郎のレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
3.9
他人の夢世界に入る機械を巡るSFで原作はSFの大家である筒井康隆氏。原作は未読ですが内容は脚色されているようです。
ジャケットにある無邪気な少女がタイトルにもなっているパプリカで夢の世界で刑事粉川をサイコセラピーをしているところから始まります。パプリカの正体である冷静沈着な千葉敦子が相方の巨漢で天才時田浩作や所長島寅太郎ら精神医療総合研究所メンバーで事件を追うというのが大体の筋ですが粉川の心の救済もテーマに入っているところが面白いです。
本作の深い考察及び洞察は他にレビューされている方々のものをご参照いただくとして印象として大きいのは圧倒的な映像世界ではないでしょうか。モノが溢れでて人間とのグロテスクな融合のようなパレードなど過剰な不思議世界は2006年作品とは思えぬほどの古びていない不気味さでした。
フロイトによると夢は抑圧されていた願望を幻覚的に充足することで睡眠を担保するものらしい(ネットの受け売りで主著は読んでおりません)ですが本作の悪夢は睡眠を捻じ曲げて精神をイカレさせてしまうというなかなか怖いものになっております。ホラーではなくSFではありますがDCミニ悪用の犯人捜しはサスペンス的でもありジャンルレスな娯楽作でもあったと思います。
本作を監督された今敏氏が過去に精神を具現化した戦いを描いた『ジョジョの奇妙な冒険』のOVAも手掛けたことがあるというのも一奇(たぶん偶然だけど)です。それにしてもこれだけの映像世界を生み出した今作が最終作ということで若くして逝去された今敏氏が惜しまれます。

余談。体調が悪い時に本作を視聴しましたが、更に気分が悪くなりました。映像に追い付かないほど頭のほうが劣化していたのか三半規管がやられていたのか…。視覚だけでなく健康状態としても記憶に残った作品です。
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