戦後。結婚して10年。子二人の夫婦。妻ミホは、浮気した夫を責め、死んでやると言う。夫トシオ(特攻隊に所属していたが死なずに済んだ)は、死んでくれるなと宥める。妻が、頭をぶってくれと言えば、ぶつ。
(トシオが防空壕のようなところから一人で大きな船を引きずり出すシュールな映像。)
ミホは、一つだけ質問があると切り出して、つっかかってくる。トシオは、どうせ答えても満足しないし、一つ答えれば次の質問が出てくるだろうととがめるが、ミホはこれだけだと言って、日記にあった「妻、不具」という記述の真意を問い詰める。
届いた手紙を読んで破り捨て、叫び出す妻。トシオは頭から水を掛け、抱きしめる。妻は、恥ずかしい姿を見せてしまったと土下座して謝る。翌日、すっかり大人しくなったミホは、優しく夫を仕事へ送り出す。トシオは出版社で、自分が書いた原稿のゲラをチェックする。友人と少し話した後、帰宅すると、妻がいない。浮気相手のところへ行き、妻が来ていないか尋ねる。そして、嫌いになったわけではないし、好きだが、もう来ないと言い置いて、帰宅する。ミホが家に戻ってきて、夫をケダモノと罵る。トシオを送り出したまではよかったが、15:00を過ぎると彼を疑い出したのだという。そして、これまで「アイツ」(浮気相手の女)にどんな贈り物をしたのか問い詰める。彼女は着物を売って、三万円払って、夫のことを調べさせたと打ち明ける。そしてミホが夫の頬を張ると、とっさに夫もやり返す。二人は取っ組み合いに。トシオが家を出ていこうとするので、ミホはすがりつき、自分が10年も気づかってきた彼の体を手放したくないと泣き崩れる。トシオは謝り、もう嘘はつかないので過去を掘り返してくれるな、これから10年は自分が妻に奉仕すると告げる。
ミホは何かとトシオをこき使う。それで満足しているかというと、やはり突然、過去のことを尋ね、「アイツ」を満足させたのかと問い詰める。分からないという夫を、嘘つきと罵倒するので、夫も奇声を上げ、線路に向かって駆け出す。ミホは夫を引き止める。その後トシオはしばらく、何も語らず、ただウンと頷くだけになる。
正月。家族の団らんかと思いきや、駅のホームで「アイツ」を見たといって、ミホが叫び出す。そして、命を賭けて愛した女を捨てられるわけがない(まだ続いているだろう)としつこく責める。トシオは着物をはだけ、肺炎になって死んでやるというと、ミホは、それなら裸になれといい、そしてトシオが裸になると、自分も裸になって、死んでやるという。隙を見てトシオが首を吊ろうとするので、ミホが止める。
夫はみなで故郷(奄美)へ戻ることを提案。妻は、自分のことを「アイツ」の名で呼べと、また嫉妬をぶり返す。そして、トシオのことを憎いわけではないのだが、何をしていいのか分からないと嘆く。
トシオはミホを欺して病院へ連れて行き、入院させる。電気ショックを怖がるミホ。自分は病気じゃないと言い張り、恐怖に怯える。そして、見舞いに来ないトシオに電話を掛けてくる。とうとう、勝手にタクシーで戻ってくる。
浮気相手の女が、町内会の見舞金を持参する。ミホは彼女をとっ捕まえると、罵り、トシオに彼女をぶつよう命じる。トシオはしぶしぶぶつ。この後取っ組み合いが始まるが、近隣の若い女が介入し、どちらが悪いのかは知らないが、野蛮なことはやめてほしいと冷静に止める。
病院に戻って、帰郷に向けた療養をするはずさったミホだが、抜け出す。トシオが捜し廻る。するといつの間にか病院に戻っている。トシオが犬みたいに泣いたから戻って来たという。持続催眠療法が始まる。「私が眠ったら寂しい?」と尋ねる妻に、「寂しい」と夫。すると「なら、うんと騒いでやる」とミホ。