マヒロ

ミセス・ダウトのマヒロのレビュー・感想・評価

ミセス・ダウト(1993年製作の映画)
3.0
売れない俳優のダニエル(ロビン・ウィリアムズ)は、三人の子供達に愛される良き父親ではあるものの、そのこだわりの強い性格から仕事はなかなか上手くいかず収入源は妻のミランダ(サリー・フィールド)に頼り切りで、家事も全く手をつけていなかった。
そんなある日、息子の誕生日パーティーで羽目を外し過ぎて近所にまで迷惑をかけたダニエルは、とうとうミランダに愛想を尽かされ離婚を切り出されたばかりか養育権も取り上げられてしまう。愛する子供達に会えないことに我慢ならないダニエルは、メイクアップアーティストである兄に協力を仰ぎ、家政婦ミセス・ダウトファイアに扮装し元の家に潜り込むことになる……というお話。

おじさんがお婆さんに成りすますという芸達者なロビン・ウィリアムズならではのぶっ飛んだ設定で、違和感なくお婆さんに見えてしまうのがまた凄い。ヒールを履いているからか、普段のロビン・ウィリアムズよりデカくなりやたらとタッパがあるのがちょっと面白いが(まさに「お前のようなババアがいるか」状態)、そこを除いたら声色や所作も本物にしか見えないクオリティ。同じ空間に二人いるフリをするためにボディスーツを脱いだり着たりとか、二つの人格を使い分けるためにドタバタさせられるのが面白い。

設定はぶっ飛んでいるが、全体的には意外と落ち着いた作風で、笑えるシーンも多い一方で偽りの姿でしか家族と会えない悲しみを感じさせるようなしんみりした場面も多い。コロンバス監督が同じくロビン・ウィリアムズと組んだ『アンドリューNDR114』と同じくヒューマンドラマに近い部分もあるが、もう少しコメディに振り切っても良かったんじゃないかなとは思った。
家事を全くやってこなかったダニエルが、家政婦として働くことでその大変さを知る……というのは良いんだけど、その成長過程があまり描かれていないのも気になるところ。まともにコンロも触れずボヤ騒ぎを起こしていたような人がしれっと普通に料理が出来るようになっていたりと、特に何の描写もなく家政婦としての信頼を得られるまで家事の腕が上がっているのが都合よく感じてしまった。
また、妻と良い仲になるスチュアート(ピアース・ブロスナン)という男、財力もあり子供の面倒見も良く、裏表のない性格で男前という完璧な人間で、別に復縁しなくても良いんじゃないかと思わせられるほどまともな人なのがちょっと気になる。まぁ、この人が悪い人だったらダニエルの改心というテーマがぶれてしまうというのは分からんでも無いんだけど、良い人だからこそ結構酷い目に遭ったまま特にケアもなく物語から退場してしまうという雑な処理が気になる。

大枠の設定のインパクトは強く、何だかんだ楽しめたんだけど、話運びの雑さと、笑いと泣かせのバランスの悪さが気になってしまう作品だった。

(2023.131)
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