マヒロ

冷血のマヒロのレビュー・感想・評価

冷血(1967年製作の映画)
3.5
(2024.37)
ある田舎の農場で、一家全員が縛られた上で近距離で銃殺される凄惨な事件が起こる。容疑者として捕まった二人の若者は一家と面識もなく怨恨の線はなく、金も奪われておらず動機が不明だったが、やがて凶行に及んだ理由について語り始める……というお話。

原作の執筆について描いたベネット・ミラーの『カポーティ』は観ていたので、ざっくりとした内容は知った上で鑑賞。とは言え『カポーティ』は捕まった後の犯人との交流がメインだったので、その前後を描いた今作と併せて観ると補完みたいになっていて面白かった。
二人の若者…ディックとペリーは、刑務所で聞いたおいしい話を元に農場に向かい強盗を目論むが、そもそも農場の主人は小切手でしか支払いをせず現金を持たない主義だったためすぐにアテが外れてしまう。何故そこで終わらずにわざわざ残虐な方法で殺しを行ったのか……というところは、彼らの語る過去の話により示唆される。『冷血』というタイトルから犯人が血も涙もないサイコなのかと思わせられるんだけど、必ずしもそういうわけではなく、彼らの周りの環境などを知ることで本当に“冷血”なのは誰なのか……というところを考えさせられる。
後半は死刑判決を受けた二人がその執行を待つ様を描いており、上告を繰り返しながら執行を引き延ばし続け、いつ来るかも分からない死を待つしかないというジリジリした恐怖の描写が見事。その幕切れのキレの良さも素晴らしく、見応えがあった。

シーンごとには良いなと思えるところは多かったんだけど、全体的に見ると流れがイビツというか、それまでの展開が積み上がっていくようなところが無くて、物語としての面白さがそこまで感じられなかった。途中でディックとペリーが少年と老人に出会い空瓶を拾って小銭を稼ぐ場面とか、本来だったら重苦しい話の中の清涼剤みたいなほのぼのシーンなんだろうけど、唐突に始まって唐突に終わるので、原作にあるからとりあえず入れたみたいな適当さを感じてしまった。もうちょっとエピソードを切り詰めてシャープな語り口にしたら良かったのになと思える、個人的には少し惜しい作品だった。
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