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の・ようなもののikumuraのレビュー・感想・評価

の・ようなもの(1981年製作の映画)
3.4
【二つ目モラトリアム】
森田芳光監督のデビュー作は、売れない二つ目の噺家さんが主人公。

昨日、鈴本演芸場の生配信をボーっとみてたら、入船亭扇遊師匠とトリの扇辰師匠が良すぎてぼーっと出来なかったんだけど、
そのお二人の師匠、扇橋師がこの映画でもお師匠さん役。
普通に話してても、噺のマクラみたいになっちゃうのがなんともいえない(笑)
生前高座でお見かけすることはできなかったけど、
こうしてお姿を拝見すると、涙が出ちゃうなあ。。

特に派手な筋立てがあるでもなく、主人公志ん魚(しんとと)と修行仲間・兄弟子などなどの日常が
オフビートなユーモアに包まれて淡々と描かれてるんだけど、
落語ブームのずっと前なのに、わりと切迫感ないのね、というのがちょっとおかしい。
まあ、師匠のとこをしくじらなきゃいつか真打にはさせてもらえるわけで、
「真打になりてえなあ」って呟きはリアルなんだけど、
どんな世界でもそんな態度じゃダメだよね、と思う。
志ん魚はどこか落語の登場人物のような不思議なおかしさと佇まいがあって、
技術とは別のとこにある「フラ」と言われるものが出せるんだけど、
それを芸に活かすには自覚的にやっていかないといけないんだな。
師匠のとある提案はそういうことだったと思うんだけどね。
まあ、最後はそのことに気付いてたんだと思う。
夜の街をさまようところ、よかったな。
いまだったらスキマスイッチかな(笑)

そしてソープ嬢役の秋吉久美子は眩しかった。
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