emily

希望の国のemilyのレビュー・感想・評価

希望の国(2012年製作の映画)
3.2
東日本大震災から数年後の長島県を舞台に、原発事故が起きたため、避難を余儀なくされた。警戒区域に指定されたのだが、小野家の道一本手前までだった。隣の家は避難所で暮らし始める。息子夫婦は将来の子供のことも考え、自主的に避難する。隣の家の息子とその恋人は恋人の親探しでさまよっている。やがて妻は妊娠するのだが、原発が怖くて防護服に身を包み、町の笑われ者になっていた。小野家に残ってる二人、妻は認知症で、避難する気は全くなく・・

震災をテーマに、その後も続いていく人々の暮らしの現実を独自視点で描いている。道一本隔てたところまでが警戒区域に指定されて、自分たちは避難しなくて本当に大丈夫なのかと、騒ぎたてる。その描写は下手したら滑稽に映るかもしれない。しかしその微妙な心情はリアルそのものである。

避難してからも原発にとらわれていく妻。その子供を守りたいという思いが町の侮辱へとつながる皮肉。徐々に病的にとらわれていく妻の滑稽さは痛切なリアルを感じさせる。防護服で身を守る、行き過ぎていても、これが本来の姿なのではないかと言わんばかりに。原発だろうが、何だろうが、人はその状況にすぐに慣れていく。そうして勝手に大丈夫だろうと決めつけてしまう。そうして徐々にそれが生活に同化していってしまうのだ。

どこに行っても安全な場所なんてない。
安全な場所だと決めるのは自分自身の心の問題でもある。
しかし一歩は踏み出さないといけない。一歩一歩進み続けるしかない。どんな現実があっても、そこにとどまることは許されない。そこに希望があるかどうか、それは開けてみないとわからないし、信じたものが希望へとつながる。
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