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俺たちに明日はないのfonske0114のレビュー・感想・評価

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)
4.0
1930年代、世界恐慌下で不景気のアメリカ。銀行強盗を繰り返すボニーとクライドの実話に基づく作品。
大好きな宇多田ヒカルの曲"B&C"の曲名及び歌詞にて「ボニー&クライド」を知り、その後ザ・ハイロウズの同題「俺たちに明日はない」で知った。

あらすじは時代背景もあってか荒く感じる所があり、銃撃シーンが多いので辛さがあったが、主人公二人の人物像がとにかくかっこいい。そして画作りが非常に良かった。個人的には全体のあらすじというよりもワンシーンごとの「決め」みたいなもので惹き込まれた作品。


以下ネタバレ感想を。

物語としては支局単純で、銀行強盗を繰り返し逃げていく話。同じパターンの中で少しずつ登場人物が増えたり、服装や場所が変わることでも飽きを少なくしている。

進行が単純なため単調になりやすいが、登場人物の個性が強くとても魅力的に見える。叫ぶことの多い兄の妻やはまり役の下っ端ももちろんだが、とにかく主人公二人がかっこいい。

見た目だけでなく主義主張をしあれこれテキパキとこなすだけでなく、この二人の間には恋愛感情のようなものもほとんど出てこない。男女もので恋愛が出ないのはとても新鮮で、二人の間には友情や家族愛のようなものをそれよりも感じ、とてもフラットな心境で見られた。

しかしそれだけに、遂に二人の愛がまっすぐ繋がる終盤からあのラストは衝撃的で辛かった。
逃亡に限界を感じ、安心と安定を求めその大切さとそこには戻れない切なさ、「これまでの真っ直ぐさ」とそこまでにあった罪が繋がっていく様は(途中の見知らぬ人に水を分け与えてもらうシーンはその演出のために非常に重要な場面だったと思う)逸脱だった。
同時に罪の重さや「主人公の死の辛さ」だけを重く見てはいけないという「一つ一つの命の重さ」も考えながら見ていた。ラストは急激に終わるが、余韻や二人の物語とした場合、あの終わり方が良かったとも思う。


作中では人物の心情と行動がメインで描かれ、それにも合わせて画作りがされている。画面の構図としてもお手本となるような場面が私のような素人にもわかるほど多いと思った。登場人物のかっこよさとこの構図が相まって全体の物語よりもシーンごとの「かっこよさ」「印象」が強く残った。

銃撃シーンが多く、銃社会の怖さや人の生死を感じさせるなど個人的には辛いシーンが多かったが、アメリカの高原な大地と走っている車に横から飛び乗るなど「アメリカっぽいな〜」というカッコイイシーンもあった。
それにしても車のキーはどうなってるんだろう、車が盗られ放題だった。


この映画は元々、私の大好きな宇多田ヒカルの曲"B&C"(アルバム『First Love』及びシングル『Movin' on without you』収録)の曲名及び歌詞に出てくる「ボニー&クライドみたいに」にて知った。
「何があっても 何があっても後悔しない 行けるとこまで行けるとこまで」と歌うこの曲は終わりでも車の急ブレーキの音があり、主人公二人と自分と相手の気持ちを重ね合わせるのは勿論、「とにかく突き進むボニーとクライド」の歌のようにも聞くことさえできるようにも思い、この曲の聞き方が変わったように思う。
尚ザ・ハイロウズも同題『俺たちに明日はない』を発表している。


U-NEXTにて観たのだが、エンドロールがメインキャストのみで、こんなに短いものを初めて見た。
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