【女性的なるものとベトナム】
まず、実在の人物の物語であることに驚きます。
事実は小説よりも奇なり。
女性は強かですね。しなやかな美しさの中に目に見えない強靭さを備えているようです。
この作品。人間関係の複雑さが面白く、明確には描かれていない部分まで邪推してしまうような毒を感じました。
このあとで観た「アオザイ」でもそうでしたが、女性的な強さとはベトナムという国自体の暗喩的な意味を持つものなのでしょう。
ゆえに、この作品においても、女性たちの存在はベトナムそのものと置き換えて考えることができるように思われます。
フランスにもアメリカにも心まで屈することのなかったベトナム。男性優位の世界の中で、彼らの価値観に心までは支配されない女性たちと重なります。
静かに展開する物語の中で、民族衣装やモン族の風俗、当地の美しい風景も見事です。
また、主人公パオの女優さんも、瑞々しさ溢れる美しさと、若者特有の陰鬱さ
をも見事に表現しており素晴らしいですね。