このレビューはネタバレを含みます
【存在の危うさ。】
犯罪心理学に心酔するあまり、犯罪者の心理をなぞり過ぎて、ついに同化してしまう主人公。
ボロいホテルも、病気持ってそうな東洋人の娼婦も、何処だかよく分からい水路なども、現実と非現実の境界線が曖昧な描写。
題材はサイコな犯罪なのだが、一面では心理劇のような雰囲気もある。
しかし結局は主人公の中で自己完結している話なので、そうとも言い切れない面もある。
心酔したものに取り込まれるというのは、良くありそうなことであるが、それ故に、己が分裂してしまうのは、果たして悲劇的なことであろうか?それとも喜劇なのか。
後味の気味悪さもさながらに、これが長編デビュー作とは恐れ入る。