やまモン

奇跡の海のやまモンのネタバレレビュー・内容・結末

奇跡の海(1996年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【鐘は虚しく鳴り響く】

エミリー・ワトソン演じるベスは、途轍もなく純粋無垢な存在である。

純粋無垢であるが故に、狂信的でもあり、それが悲劇と奇跡に繋がっていく。

西洋人が描かれる時、純粋無垢であればあるほど狂信的に描かれる。

それは彼ら彼女らが何かに染まりやすいからなのか。

確かに昔、世間知らずな優等生が多数洗脳されていた宗教団体、或いはテロ組織があったような気がする。

私がベスから連想したのは少年の頃のニュースの記憶であった。

ところで、信じる者は救われるを地で行く彼女は、自己という存在が空っぽであるべきであるかのように思考し、結果として、自我との乖離に苦悩しているように思われた。

また、自己の行いを、全て神様や旦那様からの指令として正当化する。

そもそも、不特定多数に無理矢理性的な奉仕をすることが、自己犠牲と言えるのか。

結果的に、旦那様が奇跡のような回復をしたことで、願いが叶ったということなのだろうが、そんなもの結果論にすぎない。

因果関係が曖昧な事象であったとしても、それを関連づけられないと、やりきれない場面は確かに沢山あるが。

人間は齢生き物なので、依存する相手、依存する強者を常に探し求めているのかも知れない。

良いことも悪いことも彼らのせいにすれば心も楽だ。

しかし、実際にはそのようなものは何処にも存在しないのだろう。

彼女の死の果てに、天空より鳴り響く鐘の音はとても寂しく感じられる。

これは本当に救いと言えるのだろうか?