このレビューはネタバレを含みます
【鐘は虚しく鳴り響く】
エミリー・ワトソン演じるベスは、途轍もなく純粋無垢な存在である。
純粋無垢であるが故に、狂信的でもあり、それが悲劇と奇跡に繋がっていく。
西洋人が描かれる時、純粋無垢であればあるほど狂信的に描かれる。
それは彼ら彼女らが何かに染まりやすいからなのか。
確かに昔、世間知らずな優等生が多数洗脳されていた宗教団体、或いはテロ組織があったような気がする。
私がベスから連想したのは少年の頃のニュースの記憶であった。
ところで、信じる者は救われるを地で行く彼女は、自己という存在が空っぽであるべきであるかのように思考し、結果として、自我との乖離に苦悩しているように思われた。
また、自己の行いを、全て神様や旦那様からの指令として正当化する。
そもそも、不特定多数に無理矢理性的な奉仕をすることが、自己犠牲と言えるのか。
結果的に、旦那様が奇跡のような回復をしたことで、願いが叶ったということなのだろうが、そんなもの結果論にすぎない。
因果関係が曖昧な事象であったとしても、それを関連づけられないと、やりきれない場面は確かに沢山あるが。
人間は齢生き物なので、依存する相手、依存する強者を常に探し求めているのかも知れない。
良いことも悪いことも彼らのせいにすれば心も楽だ。
しかし、実際にはそのようなものは何処にも存在しないのだろう。
彼女の死の果てに、天空より鳴り響く鐘の音はとても寂しく感じられる。
これは本当に救いと言えるのだろうか?