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栄光のランナー 1936ベルリンのRyuのレビュー・感想・評価

3.8
ジェシー・オーエンスは中学の頃から陸上選手として類まれなる才能を発揮していた。そしてオハイオ州立大学へ進学したジェシーはそこでコーチのラリー・スナイダーと出会い、練習に励んでいく。オリンピック選手に選考されるほど成長したジェシーだが、アメリカ国内ではナチスに反抗してベルリンオリンピックをボイコットする風潮が強まっていた。

このジェシー・オーエンスという人物のことは初めて知りました。ここまでの偉業を成し遂げたわりには、そこまで有名ではないような気がします。これはやはり当時の時代背景などにより、埋もれてしまったのでしょうか。
ストーリーはジャッキー・ロビンソンを描いた映画「42~世界を変えた男~」と似ていて、黒人選手が差別等に屈せずにコーチと共に頑張っていく という構成になっています。しかし今作の違うところは、やはりナチスの存在が大きいでしょう。オリンピックのために頑張ってきたのに、出場しちゃうと裏切り者のようになってしまう。スポーツと政治は切り離して考えたいが、当の開催国 ドイツはゴリゴリにプロバガンダとして利用しようとしている。いや〜、難しいところですね。ジェシーの苦悩の大きさが伝わってきました。
そうした葛藤や困難も乗り越えて偉業を成し遂げたジェシーですが、その傍らにはたくさんの人が彼を支えてくれています。メインでその関係を描かれているラリーコーチ、ジェシーを見放さずに、添い続けた妻 ルース、同じアメリカ代表の仲間たちなど。そんな中で印象的だったのが、ドイツのルッツ・ロングという選手です。ドイツ代表選手なのに、アメリカのジェシーにアドバイスをし、結果的に彼を栄光へと導いています。ヒトラーが見ているのにも関わらず、このような行動をし、競技後もジェシーと一緒にトラックをまわる という非常に勇気ある行動をしていて、これこそ真のスポーツマンシップだと思います。
偉業を成し遂げたジェシーですが、ドイツ側からの祝福はおろか、ホワイトハウスからの声明もなかったということで、当時がどれほど政治に振り回されていたかが見て取れます。この映画でジェシー・オーエンスという人物の偉業、彼を支えた人々のことを世に伝えるのは非常に意義があることだと思いました。
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