こたつむり

回路のこたつむりのレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
3.9
♪ ああ 想い出だけで 繋がるしかなくて
  ああ 途切れてしまう 息も絶え絶え

ビニールのカーテン。
工場の壁の黒ずんだ染み。
日常の背景で蠢く何か。
そして、迫ってくる何か。

うわぁ…。これは怖い…。
黒沢清監督お得意の“不快な表現”が炸裂した作品でした。これが本当のホラー映画ですね。驚かせることが主軸ではなく、気持ち悪さをグイグイと押し付けてくるのです。

これはロケハンの勝利という側面もありますね。よくもまあ…こんな気持ち悪いロケ地を探し出してきたものです(コンクリート工場に着目する見事さよ)。それとも、これが日常の本質なのでしょうか。少しだけ照明を暗くすると…何かが浮かび上がってくるのかも。うひぃ。

また、違和感だらけの物語も気味悪く。
スルリと飲み込ませる…なんて考えていない“黒沢節”は昔から冴え渡っていました。この断絶は確実なる絶壁。観客に出来るのは身を投げるか、諦めるか…その二択しかありません。嫌な話。

ただ、あえて難を言うならば。
価値観を逆転させるタイミングは早すぎたと思います。見通しが立つと怖さが半減しますので、後半は“だるさ”を感じました。全般的に尺が長すぎた気もします。

でも、その“だるさ”も味わいのひとつ。
膝を強引に曲げられた先にある発想は劇場公開から19年経た現代でも斬新。死ぬことが怖いのか。それとも孤独が怖いのか。その選択の果てに在る決断は…うう、寒気がします…。

まあ、そんなわけで。
怖さを味わうには類を見ない物語。
好奇心で手に取るのはオススメしません…。

特に何かが迫る場面…。
いきなりグニッと曲がるんですよ。
ただ、それだけなのに、ぞわっと鳥肌が立つのです。あー。やだもう、助けて助けて助けて助けて助けて助けてたすk




…あ。ひとつだけ言い忘れたことが。
女優さんたちの胸元は一服の清涼剤。これは当時のファッションのファインプレーですね。今年の夏も流行らないかな。うひ。
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