竜平

アパートの鍵貸しますの竜平のレビュー・感想・評価

アパートの鍵貸します(1960年製作の映画)
4.3
上司の頼みを断れず、また自身の昇進のために、アパートの自室を「遊び部屋」として毎夜貸している男の話。ほろ苦い大人のラブコメディ。

個人的にはこれぞ「エモい」作品。流れる音楽も相まっての、終始漂う物悲しい雰囲気。というのもこのストーリー、うだつの上がらない独身サラリーマンの悲哀のみならず、社会の縮図やどこか現実味のある恋愛模様というものまで見事に描き切ってるように思う。そしてそれをユーモアも交えて描写していくもんだから、悲しくもありつつどこか微笑ましいという。巻き起こるものに関しては、とにかく恋愛の本質を突いてる気がしてならない。男女間のトラブル、本命と愛人だとか、好きな人にもまた別に好きな人がいる、とか。今作にあるような話って、がっつりエグいものから些細なものまで、じつはそこら中にあるんじゃないかなと思うけどどうだろう。それぞれにある葛藤の部分にはヒューマンドラマ的なおもしろさも見える。きっと目が離せなくなるし、この恋の行方というのを見届けたくなるはず。

上司との付き合いのため、また人の良さも手伝ってなんやかんや頼みを断ることができない主人公をジャック・レモンが好演中の好演。鼻水止まらない時にポケットにティッシュ何枚かキープしとくやつ、俺もやる。彼が思いを寄せるエレベーターガールを演じるのが若きシャーリー・マクレーン、最高に可愛い。このメイン二人の演技がとにかく素晴らしい。表情で魅せるその時々の心情や、性格なども垣間見れる言動、そしてここでも溢れ出る、悲哀。そんで今作は終わらせ方というのがまた絶妙だったりするんだよなと。なんだこれ、くーーっ、って感じ。時間を忘れて楽しめる名作。オススメ。
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