HicK

バタフライ・エフェクトのHicKのレビュー・感想・評価

バタフライ・エフェクト(2004年製作の映画)
4.5
《魅力的な「リスク特化」作品》

【カリスマ作品】
タイムトラベル業界(?)ではたびたび名が出るほど有名でカリスマ的な作品。それもバタフライ効果による「リスク」に特化しているからかもしれない。更に、この作品内での"ルール"がとても明快で、内容がすんなり入ってくる。マルチバース理論を扱うMCUも楽しみな可能性で溢れているが、やっぱりタイムトラベル自体の醍醐味はバタフライ効果のあるこっちの理論。

【選択が重なり未来を築く】
人生は様々な出来事の積み重ねだと言うことを改めて気づかされる。自分が好きな「X-MEN:フューチャー&パスト」でもバタフライ効果を扱い「ひとつひとつの選択がさざ波になり、さざ波が集まれば川の流れを変える」と表している。まさにこの作品のこと。幼少期の要所要所でのエヴァンの行動や選択が未来を大きく作用する。

【説得力ある身体リスク】
タイムトラベルによる身体のリスクも説得力があった。トラベル前の記憶も持ちつつ、トラベル後の新しい記憶も上乗せする事で、脳には一気に2倍の記憶が収納されるため、一時的なパンク状態に陥り、次第に命の危険性が増していく。この映画独自のタイムトラベルのルールがしっかりと構築されていて、納得がしやすい。勝手が分かる。

【切なくも清々しいラスト】
命がけでケイリーを守りたいエヴァン。彼の「大切なものをどうやって守りきるか」の決断が切ない。ただ、どん底のエヴァンとケイリーを何度も見てきたので、自然とハッピーエンドだと感じてしまう。そう感じてしまう事が更に切ない…。一番しっくりくる所に着地したと思う。逆にB級サスペンスのようなモヤモヤ感は残さず、内容に反して見終わった後は割と清々しい。

【総括】
決して希望あふれる作品ではないのだが、この映画の逆を返せば「小さな事でも積み重ねていけば、未来は大きく変わっていく」というポジティブなメッセージにもなる。そう思うと希望を持ってひとつひとつの事と向かい合っていこうという気にさせてもらえる。

なによりタイムトラベルによる「リスク」だけをとことん追求したという事に、この映画の絶対的なアイデンティティがあった。


*ネタバレ疑問
前半の"ブランク"等に関する後半での伏線回収が見事だった。幼少期に描いた絵は「こういう未来から来た」という証拠として描いていたのだろう。ただ、当初の歴史では同じ絵を描いてもキリで手を刺していないので、違う未来からもトラベルしてきたということか?と考えてしまう。そして精神科で目を覚ました時も、医者に「君は以前にも大学や刑務所など訳の分からない事を言っていた」と言われていたので、その時間軸で以前にもトラベルしていたのか?私たちが見ていないパラレルのエヴァンも存在するのか?などと深く考えてしまう。その辺は監督の頭の中にあるのかも。
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