緋里阿純

ロッキー・ホラー・ショーの緋里阿純のレビュー・感想・評価

ロッキー・ホラー・ショー(1975年製作の映画)
3.4
カルト映画として、また「カルト映画」という括りの原点とも言える作品として、今なお人気を博している伝説的な位置の作品。しかし、初公開時は、あまりにもアブノーマルな内容に観客も批評家も着いて来れず惨敗だったそう。正直、個人的にも何が何やらといった印象だった。

友人の結婚式に触発され、自分達も婚約したブラッドとジャネット。早速、恩師であるスコット博士に報告しようと、雨の夜道で車を走らせる。しかし、タイヤがパンクして立ち往生してしまい、電話を掛けさせてほしいと、来た道にあった古城に足を踏み入れる。そこで展開される狂気の宴に、2人は次第に飲み込まれていく…。

元が1973年の舞台であり、キャスト陣も舞台からの続投だそう。確かに、限られた空間でのミュージカルシーンの数々はそれを思わせる。
犯罪学者が“第四の壁”を破って、こちらに語りかけながら事件の顛末を語る手法も、映画としては珍しい。

奇抜なメイクと黒のガーターベルトと網タイツのボンテージ・ファッションという強烈なビジュアル、演じるティム・カリーの熱演もあって、フランクン・フルター博士というキャラクターが後にカルト的人気を誇るのは頷ける。また、彼がバイセクシャルの快楽主義者の異星人であり、それ故にブラッドとジャネットの両名と肉体関係を持った事、地球にて理想のパートナーを生み出そうとしている事は理解出来る。
さらに言えば、そうしたキャラクターはまさに今こそ注目を集めそうな程に現代的であり、それが半世紀前に存在していたという事実に驚嘆する。

しかし、作品全体のビジュアルの奇抜さや緩さ、必要だったのか不明なやり取り等、やはり何処か乗り切れない。楽曲も個人的なヒット曲は無く、ジャネット役のスーザン・サランドンの歌声がヒットしたくらい。
カルト映画なのだから、万人受けしないのは当然なのだが。

とはいえ、真っ赤な口紅を塗った口元のアップで始まる鮮烈なオープニングは素晴らしいし、何だかんだでフランクン博士というキャラクターは、1度目にしたら頭から離れない強烈な個性がある。
トランスセクシャルのみならず、麻薬やカニバリズムも扱った攻めた内容は、カルト映画として一見の価値ある作品なのは間違いないのだろう。
緋里阿純

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