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聖職の碑のNewmanのレビュー・感想・評価

聖職の碑(1978年製作の映画)
3.7
鶴田浩二校長の奥様役の岩下志麻さんの言葉が心に残った。「生徒を亡くしている以上、夫はもう生きて帰って来ることはないでしょうから」と。白樺派の作家たちに影響を受け理想に燃える若い教員が、気負っている感はあるが、いじめには目をつぶり責任回避の姿勢を見せながら、全て受験しか見ていないように思える現在の教員と比べると清々しい。そうそう校長の言葉を思い出した。そんな教員に「校長はタヌキだ」と問い詰められたときの「タヌキにならずに校長が務まるか!!」という言葉。一方、教員役の田中健はどんなことが起きようと死んでしまう役のように思えた。彼は、裕福な農家に生まれ、小作人の娘(大竹しのぶ)と恋仲になり妊娠させてしまう。どんなに反対に遭っても教員の職を捨てても一緒になりたいのだと話す。そのことを校長に相談するが校長と奥様が良いように取り図ろうとしてくれるも親族の反対に遭ってしまう。校長は、彼を子ども達との登山に連れて行くつもりでいたが、その間に親族がどんな手に出てくるか分からないことを心配したのであろう2人でお寺に隠れていろと話す。その後、子ども達、校長の死を知った彼は私が行くべきだったと後悔を口にし、妊娠中の娘を残して自死してしまう。責任感の強さといつでも正しく生きたいという気持ちは分かったが「どんな事があっても一緒になりたい」と思った男の行動ではないと思った。
やっとたどり着いたと思った山小屋は焼けて壊れていた。画面には長い時間、山の中の風雨の強いシーンが出てくるが、本当に寒そうだったし、体の熱が奪われることで小さい子から亡くなっていく。校長は、低体温になり弱っていた子に、着ていたものを脱いで着せて上げる。不謹慎なのですが、この場面を観ながら、多くの修学旅行生を乗せた大型船が転覆した韓国の事件を思い出していた。そのままじっとしているようにと指示されたたくさんの生徒を置いて真っ先に逃げ出した船長のことをだ。
その後、学校に残っていた若い教員(北大路欣也)が山に遭難記念碑を建てたいと教育会(現教育委員会)に良い返事がなかなかもらえず、何とか了解を得て、碑が完成した翌日に亡くなってしまう。これって事実なのだろうか。
着物姿の若い教員役で出ていた三浦友和さんは本当に綺麗な顔をしていたものだと男の私が観ていてもそう思った。これでは当時人気絶頂だった山口百恵さんも全てを捨ててもいいから一緒にいたいと思うのも無理はないなどと考えていた。
昭和53年のその後の中学生の登山の様子が最後に出てくるが、今は子どもの数も少なくなっているだろうから登山はできているのだろうか。
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