IMAO

永遠の人のIMAOのネタバレレビュー・内容・結末

永遠の人(1961年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

木下恵介の映画では相当の異色作だろう。でも相当なインパクトがあって数日間残っている。そういう映画は自分にとって良い映画だと思う。アメリカのアカデミー賞ノミネート作品だそうです。ストーリーに関しては松竹のホームページに詳しく出ているので、そちらを参照して頂ければと思います。https://www.shochiku.co.jp/cinema/database/03430/

この映画で何がすごいといって、やはり男女の業の深さを描いていることだろう。ここに描かれる人物は本当にとんでもない人が多い。特に仲代達也演じる平左衛門は今なら逮捕されてもおかしくない人物だろう。そしてその妻のさだ子(高峰秀子)も今の時代なら、すぐに離婚するだろう。だが、彼らの夫婦関係は時代性や地域性によって束縛されている。だから仕方なく夫婦関係を続けるのだが、それだけに男女の業の深さが際立ってくる。さだ子は、平左衛門にひどい扱いを受け、家庭の状況が厳しいだけに、かつて結ばれるはずだった隆(佐田啓二)への思いが強くなってゆく。そして、さだ子と隆がむすばれる事はないが、その子供たちが結ばれることになる。30年にわたる愛憎劇の末に行き着いた結末に、人間の運命と業を感じる人も多いだろう。

話は少し飛ぶようだが、最近の日本の恋愛映画であまりグッとくるモノが少ない。それはやはり良い意味でも悪い意味でもサッパリしているからだと思う。なんかSNS世代だからなのかもしれないけど、最近の日本の恋愛映画じは男女の深い闇というか、悍ましさみたいなものを感じさせる作品は少ない。もちろん、それは良い事でもあるだろう。パワハラやセクハラが横行していたかつての時代には戻れないのだし、そういうことを告発することで、良い社会を作って行こうという流れなのは当然のことだろう。そしてそういう事を描いた良い作品もある。
その反面で、他人にはあまり深く関わらないというか、深い関係性を求めない、もしくは求める事が出来ない風潮のようなものを感じていたりもする。他人の踏み込むことによって、その人を必要以上に傷つけてしまったり、また逆に傷つけられたりすることに対して警戒しすぎているのではないだろうか?だから皆、表面的には優しくなっているが、それは実はあまり他人と深く関わらないためのバリアーであったりもする。そしてその反動がSNSなどでのヘイトに現れていたりする様に思える。直接話せないことはネットで批判すれば良い、みたいな感覚が横行している気がするのだ。そんな事をこの映画を観て感じたりもした。
何はともあれ、画作りもとても美しく日本映画最盛期の底力を感じるこの作品。またぜひスクリーンで観直したい!
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