シエル

囚われの女のシエルのレビュー・感想・評価

囚われの女(2000年製作の映画)
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一見サラッとしたタッチで、でもしつこくしつこくしつこい質問をアリアーヌに浴びせるシモン。嫉妬と分りながら敢えて核心には触れずサラリと流すアリアーヌ。
観ているこっちが飽き飽きして来るけど、奇妙な均衡を保つ二人。

「セックスの最中、君はなにを思っている?」とシモンがアリアーヌに二度も聞くけど、ちょっと待って、あれをセックスと君は言うの?
寝ているアリアーヌに、自分はフル着衣のまま、君が良くなっているだけだけど?

これに象徴されるようにシモンはずっと一人相撲をとっている。

諸々、感覚のズレの表現がおもしろくて、終盤のシモンの「君と僕とでは恋愛感覚が違い過ぎる」という台詞にはそりゃそーだ笑、ってなるし、(静かにだけど)大騒ぎして別れるって言っておきながら、「もう少し続けてみる?」には、えー?!笑、ってなった。

ノワール的な音楽の使い方が、強調され過ぎのような気がして、パロディなのかと疑いたくなったけど、いやいや普通にノワールやろうとしてたのか、とも思う。この監督の作品の初見なのでまだ掴みかねている。

一緒に暮らしている恋人同士なのにずっとvouvoyerしているのは上流階級だからか、と思いきや、終盤シモンが「もう僕達別れよう!」とトチ狂ってからはtutoyerに変わり、さらにその後は(聞き間違いでなければアリアーヌがシモンに)vousと言ったりtuと言ったり混乱を極めてる。

一定の節度と距離を保っていた二人が、別れ話によって一気に距離を詰めたけど、(主にアリアーヌが)本当の距離を測りかねてかあるいは無意識に遠ざけたくてか揺れているのが感じられて、ここら辺から不穏な空気になって来る。

結末は予見されたけど、夜の海のショットは素晴らしく、明けた後のボートの耐え難いほどゆっくりとこちらへ向かうさまと、異常なほどコントラストが強められたシモンの顔が大変に恐ろしかった。

(2022年映画館29本目)
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