Kuuta

エンジェル ウォーズのKuutaのレビュー・感想・評価

エンジェル ウォーズ(2011年製作の映画)
3.6
B級バカ映画風のパンズラビリンス。合わない人には絶対に合わないであろう作風ですが、私は好きです。

金髪美少女のベイビードール(エミリー・ブラウニング。20歳という設定は義父の付いた嘘だろう)が3m近い侍とチャンバラするのは楽しいし、ロードオブザリングな世界でガトリングが乱舞するのも楽しい。薄っぺらいCG映像の嵐にクラクラさせられ「どうせ妄想だから全部どうでも良い」という理性も働かなくなる。頭がぼーっとしてくる。これはIMAXで見たかった。

「セーラー服の美少女が日本刀やピストルでドラゴンやゾンビナチス兵と戦う映画が見たい」というオタク的欲望を、娼館のステージで踊る少女を見て喜ぶ男の姿とリンクさせる。

しかもその娼館シーンすら…という3層構造。劇中では描かれないが、恐らく彼女は性的な行為をして脱出のためのアイテムを手に入れており、その現実から別世界に逃げ込む心の動きを追体験する。

ベッタベタな展開のループで観客の欲望をくすぐりながら(要はポルノと同じ)、八方塞がりの世界で生きようとした少女を描く。この構成を考え、2時間を力技で押し切った時点でザック・スナイダーはエライ。

ヒット曲(ピクシーズやビョークといったストレートな選曲が心に刺さる)とCGまみれの戦闘シーンは映画というよりミュージカルやMV(繰り返すがポルノ)に近いが、この映画に関して言えば、映像が現実から乖離すればするほど、実際の少女の状況との対比が生まれて映画的には「良く」なっていくため、監督が思う存分映像で遊べる作りになっている。

スイートピーとロケット姉妹のエピソードには、妹を義父から守れなかったベイビードールの自責と後悔の念が影響している。スイートピーに自分を投影しながら苦しい過去を糧に戦い、自分の存在を証明しようとする(最後のシーンがベイビードールの妄想の可能性もあるのがキツイ…)。

現実と虚構の間で、演出になるべく差を付けないようにしている点も面白い。おかげで全ての層がファンタジーに見えて来るので、「どの層を現実として捉え、何をメッセージとするかは見た人次第」との結論にも納得感がある。冒頭で「舞台の幕が上がる」演出を入れた上で、エンドロールのあの映像。周到な作りだと感じる一方で、パンズラビリンスのような突き放し感は無く、オチは若干おとなしく、物足りなくも感じた。72点。
Kuuta

Kuuta