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地獄の黙示録・特別完全版のLongsleeperのレビュー・感想・評価

地獄の黙示録・特別完全版(2001年製作の映画)
4.3
展開らしい展開は少ないんだけど、物凄く重厚で、監督の描きたかった狂気や虚無が超絶濃縮されて伝わってくる感じ。
なのに特に前半は映像にとにかく引き込まれる。
度数が高いのに飲みやすい酒とかめっちゃ味が濃いのにどんどん行けちゃう肴みたい。
戦争や人の生死のような重いモチーフを、見栄えの良い(本作の場合、見目のいいキャストがいて迫力ある規模で撮る)映像で表現することは、充分な説得力や一貫性がなければ、ひたすら嫌悪感をもよおす浅薄な雰囲気動画になってしまうと思う。
でも本作には重厚な哲学とテーマの下支えと発露があって、ああこれはこう撮るしかなかったんだと感じた。特に前半。
戦争が雰囲気動画を撮るための手段やきっかけじゃなく、描きたいものそのものだから。
人の命は儚いし脆いし、人が人の暮らしや命を奪ったり壊したりすることは、大きな組織が本気になれば簡単。
だけど生きたい本能を抱えた生き物が、生存上必要のない殺戮や暴力に行動を委ねることは、それ自体が狂気で、大義はもはや関係ない。
殺人は殺人である。
かと言ってアメリカ人や軍人を悪役として非難するための映画でもない。
フランス人の農園やサーフィンのくだりはやや違和感(長いor唐突感)があると思ったら、完全版に追加されたフッテージらしい。
凄まじい密度と説得力。
フランシス・コッポラ監督の他作品、まだゴッドファーザーしか観てないのでどんどん観よう。
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