路地に男女を立たせて引きで決めて撮ったり、車内を後部座席から手持ちキャメラで撮るくだりにごきげんなジャズを流したり、おそらくゴダールの影響は大。物語は、右にも左にも揺れてよく分からない。産業スパイの田宮二郎も切れ者のようでそれほどでもなく、そんな若造にいいように振り回される周りの大人たちが馬鹿みたいに見えるからサスペンスとしては失敗。
泥臭い話に、ヌーヴェルヴァーグ的な感性で映画を撮っても全然はまらないと言うか、その試みを徹底しているならまだしも、基本はベタな日本(娯楽)映画でしかないので、そのなかに挟まれるスタイリッシュさが、ちぐはぐと浮いたように見えた。おフレンチ映画の役者のように着飾る浜田ゆう子の佇まいのみ良かった。