ベビーパウダー山崎

挽歌のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

挽歌(1957年製作の映画)
3.5
不在だった母を高峰三枝子に求めているのは間違いなく、ともすれば父の役割は森雅之に背負わせていて、その父と夜をともにするのは近親相姦的なアンモラルさに酔いしれている風でもあり、結果としてその不道徳な行為が母殺しに繋がり、疑似家族さえも崩壊させていく。
久我美子のサディスティックで歪んだ言動の何もかもが動かない片腕にあるわけではないが、少なくとも彼女はそう思い込んでいる節があり、憎しみというより、その開き直りと自虐がますます己も周りも不幸にしていく。
家族の愛情も得られず、片腕は動かないまま。彼女はこの経験から成長したのだろうか?間接的に人を殺し、他人の家族を壊してなにかを学んだのだろうか?ラストに脳天気な劇団員と車に揺られていたが、彼女は何も変わっていないんじゃないかと思う。荒野にひとり佇む冒頭の久我美子、あの冷めきった寒々しい姿がすべて。
メロドラマだが、異様なキャラクターのサイコパス映画としての枠組みもあり。