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宇宙飛行士の医者のslowのネタバレレビュー・内容・結末

宇宙飛行士の医者(2008年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

見送った列車を背景に放ち、手前では別のシーンがごく自然に展開を始める。たまらない。こちらロシア映画。ズビャギンツェフも素晴らしいなと思っていたけれど、まったく層が厚い。本作に、近年ヒットしたハリウッドの宇宙映画を期待してはいけない。宇宙飛行士の健康管理をする医者の姿を、淡々と見せる映画。この医者の苦悩がとにかく多い。送り出す宇宙飛行士のこと。打ち上げが成功するのかということ。もし成功すれば変わっていくであろう世界のこと。自らの論文のこと。何故かモテてしょうがないこと。諸々。

基本長回しが多く画面に映り込む人数を考えると、撮影には綿密な計算が必要とされそう。ただ、長回しと言ってもアルトマン映画のようにカメラが忙しく人を追うのではない。カメラではなく人が動く、背を向けて話し始める、かと思えばカメラ目線で不敵に笑ってみせる。何だか凄く子供みたいな演技をさせたかと思ったら、次の瞬間息を呑むようなシーンを差し込んでくる。
およそ臨場感なく発射されるロケット。まるで死の海面を走る男。白い車の丘で叫ぶ群集とマフラー。挙げればキリがない、魅せられた。
愛達の割れてしまった器は、磁器のそれのように美しいままではいられない。声は彼方まで続く水溜りのような世界に、吹いて消えていく。鼻で消灯、からの暗転。素敵。
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