ツクヨミ

出来ごころのツクヨミのレビュー・感想・評価

出来ごころ(1933年製作の映画)
3.2
小津安二郎が紡ぎ出す人情話。
ビール工場で働く喜八は飲んだ帰りにキレイな娘に出会うが、その娘は1人きりで寂しそうにしており…
小津安二郎監督作品。amazon prime videoでは活弁付きだったのでそのまま鑑賞、今作は前年に撮られた"生まれてはみたけれど"から続く動くカメラワークが多いながら、ところどころに"小津調"の片鱗が見られる美しさが散りばめられていた。それは家屋の中をローポジションで映したショットだったり、小道具を映したショットが多かったりと実に小津安二郎の得意とする映像があるから他ならない。その点に関して今作は後期の小津作品の源流とも言える。
内容としても前半はオヤジが若い娘に恋するストーリーをコメディタッチで面白おかしく描くが、後半はのっぴきならない失恋から"家庭の危機"が訪れるいつもの小津安二郎で心を抉られる。コメディで面白い要素がありながら生活苦や人生の世知辛さを描く二面性がある作風は安心感さえ感じるし、私が小津安二郎監督を好んで見るのはそこに理由があるからだろう。
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